道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
術前化学放射線療法が奏功したBR-PV膵頭部癌の1例
鈴置 真人大原 正範岩代 望小室 一輝高橋 亮大高 和人溝田 知子水沼 謙一守谷 結美木村 伯子
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2020 年 3 巻 1 号 p. 50-54

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抄録

BR膵癌は技術的に外科的切除が困難であることに加え,局所浸潤により切除を施行してもR1切除となる可能性が高く,術前治療を含めた集学的治療がR0切除率の向上や長期予後を改善させる可能性があると期待されている.今回、われわれは術前化学放射線治療(CRT)が奏功し,膵頭十二指腸切除を施行したBR-PV膵頭部癌の1例を経験したので報告する. 症例は60代の女性.糖尿病で近医に通院中,血糖値の上昇を認め腹部USを施行したところ,膵頭部に低エコ-腫瘤を指摘され,精査目的に当院を紹介,入院となった.精査の結果,PV,SMVに浸潤を伴う50x42mm大の膵頭部癌(cT3 cN1 cM0, cStage IIB)の診断となり,BR-PVの判断で術前CRTの方針となった. 術前治療としてGEM+nab-PTXx2コース,その後,S-1+膵頭部腫瘍への外照射(50.4Gy/28fr)を施行した.治療後のCTでは膵頭部の腫瘍は39x25mmと縮小し,SMV狭窄像の改善が得られ,CRT終了後から約4週間後,亜全胃温存膵頭十二指腸切除,SMV楔状切除を施行した.病理組織学的検査では門脈浸潤は確認されず,ypT2 ypN0 yM0, ypStage IBであったが,PCM1でR1切除の結果となった.術前治療の組織学的効果判定はGrade 1bであった. 術後はGEMによる全身化学療法を6コース施行し,再発所見を認めずその後は経過観察としている.手術から1年4ヶ月が経過した現在,再発は認められていない.

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