道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
前立腺がんに対する放射線治療におけるSpace OAR™システムの有効性の初期検討
山下 耕平西川 貴博小山内 幸次小林 聖子相馬 渉米屋 麻美池本 晴哉藤井 收
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2024 年 7 巻 1 号 p. 34-35

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抄録
【背景】前立腺がんに対する放射線治療において、前立腺とそれに隣接した危険臓器である直腸の線量が重要である。当院では直腸線量の低減を目的として2021年12月から適応のある患者にSpace OARシステムを導入している。Space OARシステムとは照射される直腸体積の減少を目的に、ハイドロゲルを前立腺と直腸の間に挿入し、両臓器間の距離を拡げる手技である。本検討ではSpace OARシステムが、直腸線量にどれほど影響を与えるのかを知ることを目的として、直腸内の高線量域の体積を調査し、Space OARシステムの有効性を検討した。 【方法】当院で2021年4月から2023年3月の期間に前立腺がんに対する放射線治療を施行した患者で、Space OARシステムを導入前の20例、及び導入後の20例を対象とした。放射線治療計画用CT画像から、直腸内の高線量域の体積を算出し、Space OARシステム導入前後で比較した。本検討では直腸内の高線量域の体積の指標を65及び70Gyが照射された直腸体積の割合を示すV65、V70(%)とした。また処方線量は通常分割で76Gy/38回とした。当院では前立腺がんに対する放射線治療の前処置として飲水による畜尿と下剤の服用、直腸の導気を行っている。 【結果】直腸のV65及びV70(%)はSpace OARシステム導入前で15.2±2.5及び11.1±2.4であり、導入後では3.8±2.7及び0.7±1.2であった。何れもSpace OARシステム導入後の方が低値を示した。 【結論】前立腺がんに対する放射線治療においてSpace OARシステムは、直腸内の高線量域の体積を減少させることができ、晩期直腸障害の低減が期待できる。
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