抄録
3種類の市販チタン用焼付陶材中の元素が加熱中に酸化チタンへどのように拡散するかを調べた.円板状に形成し焼成した陶材上にチタンを2種類の厚さに真空蒸着し,大気中で加熱した.蒸着膜厚は,表面アラサ計およびエリプソメーターによって測定した.加熱によってチタンは酸化し,薄い酸化チタンが陶材を覆った.この表面およびチタンを蒸着していない陶材の表面をX線光電子分光で解析した.その結果,チタン用焼付陶材はホウ酸の量が従来型よりも多かった.これは,チタンに合わせて熱膨張係数を小さくするためと考えられる.加熱後の酸化チタン中のチタンは3価と4価の間の価数であり,ナトリウム,カリウム,バリウムのみが加熱中に酸化チタンに拡散した.これらの元素は酸化チタン中に混合しているのではなく,チタンと複合酸化物を形成していた.これらの元素の拡散は陶材とチタンとの結合に関係していると考えられる.