抄録
アマルガムにインジウムを含有させると硬化初期過程での水銀の蒸発が有意に抑制されることが知られている.本実験では,インジウムを含有した2種の市販高銅型合金粉を使用して作製したアマルガムからの硬化初期過程における水銀の総蒸発量を測定した.実験結果を既報の単一組成高銅型合金粉(Tytin, T)とインジウムを含有した水銀とを練和して作製したアマルガムからの水銀の蒸発挙動と比較した.インジウムを高銅型合金に合金化した粉末(Indiloy, S)を水銀と練和して作られたアマルガムと,水銀-インジウム液体合金で練和したTアマルガムは,練和開始後3時間以内で水銀の蒸発が検出されなくなるのに対し,純インジウム粉末を高銅粉と混和した混合粉末(Indisperse, D)と水銀からのアマルガムは3時間以上にわたり水銀の蒸発が認められた.アマルガムDからの蒸発水銀量は,アマルガムSや水銀-インジウム液体合金で練和したTアマルガムよりも有意に大きな値を示した.インジウムをアマルガムに添加するにあたり,インジウムを直接水銀と合金化する方法ないしアマルガム用合金粉末に合金化する方法は純インジウム粉末をアマルガム用合金粉末と混和する方法よりも蒸発水銀の抑制にはより効果的と考えられた.