Dental Materials Journal
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陶材焼付用合金に形成された鉄酸化物のX線マイクロアナライザーによる状態分析
大野 弘機神澤 康夫鷹觜 聖子
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1983 年 2 巻 2 号 p. 179-191,227

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抄録

Fe, Snを少量含む陶材焼付用金合金(Au 85.5, Pt 6, Pd 6, Ag 1, Fe+Sn 1.5wt%)において,結晶粒界に沿って析出する内部酸化が発見された。この一般の内部酸化機構と異なる現象に対して,著者らは,Fe3+よりもO2-が拡散しやすいFe2O3が粒界に形成し,それを通ってO2-が合金内部へ供給されるために粒界に沿って内部酸化が進行するという仮説を報告した。また,同じ合金系において,Snに富む合金においてのみ,Fe2O3と共にFe3O4が形成されることを見出した。そこで,上記の仮説を検証するためと,これら2つの酸化物の酸化層内における分布を明らかにするためにXMAによる状態分析を試みた。この方法は,数ミクロンの微小領域の化学結合状態を調べるのに適した方法である。その結果,結晶粒界に析出した酸化物は,Fe2O3を芯として,その周囲にSnO2の鞘が形成することが明らかになり,上記の仮説が証明された。また,Fe3O4は,酸化表面に近い領域に多く分布していることが明らかになった。

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