抄録
パラジウムを含有する市販歯科用14K, 16K金合金の等温時効による硬さの変化とその原因機構について,電気抵抗測定,硬さ試験,X線回折,電子顕微鏡直接観察,制限視野電子線回折によって検討した。
時効硬化は準安定相であるAuCu I'規則格子の形成に伴う整合ひずみによって生ずる。AuCu I'規則相は反応の進行とともにひずみを解放するため双晶化するが,これによる過時効軟化は顕著ではない。過時効軟化は平衡相AuCu I規則格子とAg-rich α2相の二相分離が結晶粒界から起こることによって生じ,その原因はこれら二相によって形成されたラメラ構造の界面が非整合になるためであることが解った。