アルミ・ブロンズ(銅・アルミニウム合金)は,工業方面では海水耐食性を要求される部品などに用いられており,歯科においては,鋳造用合金としてヨーロッパ,アメリカ合衆国,南アメリカ,アジアなどで市販されている。それらを代表する組成として,工業用アルミ・ブロンズの中から,CDA955 (Cu-Al-Ni-Fe)とCDA956 (Cu-Al-Si)をとりあげ,電気化学的腐食挙動と変色傾向を調べた。電気化学的腐食挙動の測定は,リンゲル液中と10分の1濃度のリンゲル液を用いて行ない,腐食電位,腐食電流,腐食抵抗,ターフェル定数を得た。これらの値や分極曲線は,合金間に大きな差は見られなかったが,塩素イオン濃度の影響を大きく受けた。変色試験は,Tuccillo and Nielsenの方法に従って1%硫化ソーダ溶液中で行なった。変色の程度は,CDA955の方が大きく,合金間の差は著しかった。CDA956は,金合金,銀・パラジウム合金よりは変色したが,ステンレス鋼と同程度であり,CDA955は,アルファしんちゅうやシリコン・ブロンズと同程度であった。
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