Dental Materials Journal
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3 巻, 2 号
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  • 中山 正彦, モーザー J.B., グリーナー F.H.
    1984 年3 巻2 号 p. 133-138,330
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    アルミ・ブロンズ(銅・アルミニウム合金)は,工業方面では海水耐食性を要求される部品などに用いられており,歯科においては,鋳造用合金としてヨーロッパ,アメリカ合衆国,南アメリカ,アジアなどで市販されている。それらを代表する組成として,工業用アルミ・ブロンズの中から,CDA955 (Cu-Al-Ni-Fe)とCDA956 (Cu-Al-Si)をとりあげ,電気化学的腐食挙動と変色傾向を調べた。電気化学的腐食挙動の測定は,リンゲル液中と10分の1濃度のリンゲル液を用いて行ない,腐食電位,腐食電流,腐食抵抗,ターフェル定数を得た。これらの値や分極曲線は,合金間に大きな差は見られなかったが,塩素イオン濃度の影響を大きく受けた。変色試験は,Tuccillo and Nielsenの方法に従って1%硫化ソーダ溶液中で行なった。変色の程度は,CDA955の方が大きく,合金間の差は著しかった。CDA956は,金合金,銀・パラジウム合金よりは変色したが,ステンレス鋼と同程度であり,CDA955は,アルファしんちゅうやシリコン・ブロンズと同程度であった。
  • 浅岡 憲三, 桑山 則彦
    1984 年3 巻2 号 p. 139-147,330
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    金属焼付陶材の機械的性質は構成各材料の熱膨張係数,熱仮導率,機械的性質,形状,界面の接着強さにより決まる。とくに,熱膨張係数と弾牲係数は各材料の強さと同様に重要な因子である。
    材料の適合性に関する問題を明らかにするために,3層よりなる平板モデルを利用して金属焼付陶材の残留応力と変形を梁の理論を適用して明らかにした。また,合金の弾性係数が異なる2つの場合に対する検討から,貴金属系合金および非貴金属系合金を陶材焼付けに利用したときの残留応力,変形の違いについて調べた。その結果,焼成後の残留応力,変形は非貴金属系合金の方が大きくなることがわかった。したがって,非貴金属系合金では界面反応層が貴金属系合金よりも金属焼付陶材の焼成に際し重要な問題になる。とくに,その熱膨張係数と弾性係数が重要であることがわかった。また,陶材の熱膨張係数が金属の熱膨張係数よりも若干小さいことが適合性の点から好ましいことが明らかにされた。
  • 岡本 佳三, 堀部 隆
    1984 年3 巻2 号 p. 148-162,330
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    焼付用陶材粉末の諸性質を調べるとともに,これらの観点から白金炉および赤外炉によって作製された陶材焼成物の色調変化を客観的に測定したところ,白金炉焼成物と赤外炉焼成物との比較は,U-B陶材のb値のみ赤外炉焼成物が4.44 (0.305)に対して4.81 (0.102)と高く,他の測定値はすべて赤外炉焼成物の方がL, a, b値において低値を示した。C陶材のL, a, b値は,すべての測定において,低値であった。V-D陶材のa値とV-I陶材のb値が白金炉焼成物の-0.43 (0.030)に対して,-0.32 (0.041)と赤外炉焼成物が高値を示し,他の測定値はすべて赤外炉焼成物の方が低値を示した。J-O陶材のb値とJ-B陶材のL, b値およびJ-E陶材のL値が赤外炉焼成物において高値を示し,他の測定値はすべて赤外炉焼成物が低値を示した。またCOLOR TABLEと各陶材焼成物とは色彩において両者の相違が見られ,白金炉と赤外炉などの熱源によっても陶材焼成物に色調の変化が表われた。
  • 和田 正高, 菅原 敏, 塙 隆夫, 大川 昭治, 近藤 清一郎, 太田 守
    1984 年3 巻2 号 p. 163-169,331
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    臨床で認められているように,義歯床の破折の大きな原因の一つは疲労である。これを究明するために,著者らはサイクリック・クリープ・テスタを設計製作し,その試用結果を先に報告した。
    さらに本研究では,サイクリック・クリープの数値解析として,FEMをコアとするシミュレータを開発し,パーソナルコンピュータを使用してシミュレーションを行った。
    試験方法として,JIS及びADASに基づく片振り曲げ負荷を採用した。材料はエンジニアリングプラスチックの内からPEEKを採りあげた。この材料のDENTU-RE使用時を想定してシミュレーションを行い,二,三の興味ある結果を得たので報告する。
    なお,本研究は歯科領域におけるCAEとしての試みであるが,なお機器の面で増強の予定がある。
  • 中井 宏之, 鈴木 一臣, 入江 正郎, 長山 克也, 橋本 弘一
    1984 年3 巻2 号 p. 170-192,331
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    入手可能な低,高銅型アマルガムアロイの物理的諸性質を主としてA.D.A.規格No.1の方法によって測定してその特性を比較,考察した。同時に,練和時間の変化がこれらの物理的諸性質に及ぼす影響についても検討した。
    低銅型アロイにおいては粒状が物理的諸性質に及ぼす影響は比較的小さかったが,高銅型アロイでは著明であった。即ち,球状粒子のみで構成されている単一組成型高銅アロイは他のすべてのアロイに比べて際立った特徴を示した。即ち,低銅型アロイは勿論,配合型高銅アロイも明らかに異なった特徴を持つことがわかった。
    練和時間が物理的諸性質に及ばす影響についてみると,不充分な練和は低,高銅型を問わず削片状アロイの性質に著しい悪影響を及ぼすが,球状アロイにはその影響が比較的小さいことがわかった。製造者の指示よりも過剰に練和した場合は機械的性質は若干向上するが,著しい発熱,操作時間の短縮,硬化時の収縮を伴なうので臨床的に利点があるとは思われなかった。物理的諸性質のうちで練和時間の影響を特に著明に表わしたのは,クリープであった。
  • 白石 孝信, 太田 道雄, 山根 正次
    1984 年3 巻2 号 p. 193-204,331
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    CuPd-AuCu擬2元合金の規則化と時効硬化機構を検討した。e/a値(伝導電子濃度)が0.87より小さい合金では時効初期に短範囲規則化が進行し,その後不均一規則化機構により長範囲規則化が結晶粒界から起こった。これらの合金の時効硬化はCuPd相またはAuCu I相の体積率の増加によるものであった。一方,e/a値が0.87より大きい合金ではAuCu I型規則格子の微細なドメインが粒内に速やかに形成された。この反応により引き起こされる弾性ひずみ場が時効硬化の原因であった。
  • 入江 正郎, 鈴木 一臣, 中井 宏之
    1984 年3 巻2 号 p. 205-209,332
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    タンニン・フッ化物合剤(HY剤)の配合されたカルボキシレートセメントとリン酸セメントについて長期間の浸水に伴う物理的性質の変化を検討し,フッ化物の配合されていない同種セメントと比較した。
    圧縮,引張り強さについてみると,カルボキシレートセメントの場合にはHY剤配合による影響んどはほとみられないが,リン酸セメントの場合には,強さが明らかに増加した。寸法変化,吸水性についてみると,HY剤の配合されたカルボキシレートセメントの場合,12ヶ月の浸水後では配合されていないものの約2倍の収縮を示し,吸水率も硬化後の早期からわずかながら増加した。一方,リン酸セメントの場合にも,HY剤を配合されたものの方が収縮も吸水率も逆にわずかながら減少した。
  • 松家 茂樹, 松家 洋子, 山本 泰, 山根 正次
    1984 年3 巻2 号 p. 210-219,332
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    酢酸,乳酸,クエン酸および塩酸中におけるグラスアイオノマーセメントの侵食過程を化学分析,SEM観察および赤外吸光分析により検討した。
    各酸の陰イオンとAl又はCaとの錯体の安定度定数が大きい程あるいは,酸溶液のpHが低い程,Al, Ca, Na, SiおよびFの溶出量が多くなった。SEM観察により,0.01Mクエン酸および塩酸中ではセメントマトリックスが溶解することが分かった。0.01Mクエン酸および塩酸中では,セメント浸漬後に白色沈殿が生成した。その沈殿は,水和ケイ酸質ゲルであることがIRスペクトルによりわかった。
  • 酸処理法の臨床応用の改善
    武谷 道彦
    1984 年3 巻2 号 p. 220-245,332
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    エナメル質酸処理法に関する研究として,エナメル質の酸処理面や接着破壊面をSEMを用いて観察した。また,酸処理に伴うCaの溶出量,中心線平均アラサ,接着強さの測定を行った。その結果,まず小柱中心部が窪み,次に小柱辺縁に狭い溝が形成され,酸処理時間が長くなる程溝は広く深くなった。接着破壊面には,レジンとエナメル質の破折が観察された。リン酸はすべての測定値において大きな値を示した。シトラコン酸とピルビン酸は,Caの溶出量はリン酸の約半分であったが,それ以外の測定値はリン酸とほぼ等しかった。クエン酸はすべての測定値で最小の値を示した。Caの溶出量と接着強さは,酸の濃度が増加するにしたがい一定の値までは増加するが,その後減少した。すべての測定値は,酸処理時間が長くなる程増加した。シトラコン酸の臨床使用の可能性が示唆された。
  • 高橋 純三, 岡崎 正之, 木村 博, 古田 安宏, 山田 勝康
    1984 年3 巻2 号 p. 246-252,333
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Ni-43.5% Ti合金をアルゴンアーク溶解加圧鋳造機により,リン酸塩系埋没材鋳型に鋳造した。鋳造体は片持ち曲げ試験において超弾性を示した。本合金を新しいキャスト・クラスプ用合金として評価するために,疲労特性を検討した。疲労試験は片持ち片振り繰返し曲げ方式の試作試験機で行った。本合金の耐疲労性は,曲げ特性を考慮した時,比較対照としたCo-Cr合金およびType IV金合金より優れていることが知られた。
  • 有働 公一, 久恒 邦博, 安田 克廣, 太田 道雄
    1984 年3 巻2 号 p. 253-261,333
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    パラジウムを含有する市販歯科用14K, 16K金合金の等温時効による硬さの変化とその原因機構について,電気抵抗測定,硬さ試験,X線回折,電子顕微鏡直接観察,制限視野電子線回折によって検討した。
    時効硬化は準安定相であるAuCu I'規則格子の形成に伴う整合ひずみによって生ずる。AuCu I'規則相は反応の進行とともにひずみを解放するため双晶化するが,これによる過時効軟化は顕著ではない。過時効軟化は平衡相AuCu I規則格子とAg-rich α2相の二相分離が結晶粒界から起こることによって生じ,その原因はこれら二相によって形成されたラメラ構造の界面が非整合になるためであることが解った。
  • 田島 清司, 柿川 宏, 小園 凱夫, 林 一郎
    1984 年3 巻2 号 p. 262-271,333
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    種々な溶融方法を用いて鋳造した3種類の市販Ni-Cr系合金と純Niの鋳造体(研磨後)中に含まれる酸素と窒素の定量を行い,両者の量に及ぼす溶融方法および合金成分の影響について検討を加えた。比較した溶融方法はアルゴンガス中高周波,大気中高周波,2種類のアルゴンアーク(アルゴンガス置換とアルゴンガス吹き付け),酸素-プロパン混合ガスを用いたトーチによる溶融の計5種類とした。アルゴンガス吹き付けによるアーク溶融は他の溶融方法4種類に比べて有意にガスの吸収を引き起こし,他の溶融方法ではその間に有意な差は認められなかった。この影響は特に,Cr, SiあるいはMnをあまり多く含まない合金に対し顕著に示されていた。さらにこの合金において,アルゴンガス吹き付けによるアーク溶融を用いた鋳造体の内部には多くのポロシティーが確認された。一方,硬さに対しては有意な影響は認められなかった。
  • 川口 稔, 福島 忠男, 宮崎 光治, 堀部 隆, 羽生 哲也, 澤村 直明
    1984 年3 巻2 号 p. 272-279,333
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    歯科用レジン材料の物性向上を目的として,多官能性メタクリレートの構造と物性との相関を検討中であるが,前報では,分子中心骨格がビスフェノールS型のジメタクリレートの合成とMMA共重合体の物性について検討を加えた。その結果,芳香族系の導入が共重合体の物性向上に有効であることが判明した。今回は,分子中心骨格に各種の芳香族系を有するジメタクリレートの分子構造と物性との相関を検討する目的で,中心骨格にビスフェノールA,ビスフェノールS,ハイドロキノン,ビフェニル構造を有し,鎖長の異なる8種のジメタクリレートを合成し,MMA共重合体の物性を測定した。その結果,ビスフェノールS,ビスフェノールAを中心骨格に有するジメタクリレートが,総体的に良好な物性を示し,歯科用メタクリレートモノマーとしての有効性が示唆された。
  • 中村 正明, 土井 英暉, 横山 和泰, 川原 春幸
    1984 年3 巻2 号 p. 280-287,334
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    超微粒子フィラー配合コンポジットレジン3製品と支台築造用コンポジットレジン4製品の硬化試料のHeLa S3細胞に対する細胞毒性を調べるために,in vitro環境下で細胞コロニー形成法を駆使して実験を行った。2週間の単位浸潰期間を合計6週間にわたって,口腔内の動的環境のシミュレーションを目ざした旋回投入浸漬を続け,各時期の浸漬液を実験に用いた。その結果,テストした全材料で初期に浸漬液の濃度があがると中等度から強い細胞毒性を示した。しかし,浸漬4週目,6週目においてはその細胞毒性はほとんど消失し去った。この結果は同時にテストした従来型のConciseと酷似していたし,既にテストした他の従来型製品とも軌を一にするものであった。以上の実験結果はテストした2種類のコンポジットレジンが細胞に対して従来型製品ときわめてよく似た影響を及ぼすことを示している。
    本研究の一部は文部省科学研究費補助の試験研究(56870103)による。
  • 第2報 抗菌性の検討およびその臨床応用に関す遠隔成績について
    南部 敏之
    1984 年3 巻2 号 p. 288-311,334
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    クロルヘキシジン塩酸塩の配合による,根管充填用シーラーへの抗菌性の付与を目的とした本研究の第一報において,ベースとなるシーラーの材料学的な検討がなされ,優れた物性を示すように組成が決定された。本報の前半では,この組成にクロルヘキシジン塩酸塩を配合した試作シーラー(K-20)に関して,硬化物からの有効成分の溶出,口腔内細菌に対する抗菌性およびその経時的変動についての吟味が行われ,さらに動物実験によって安全性が確かめられた。また後半では,こうして抗菌性と安全性が確認されたK-20を実際の症例に適用し,その遠隔成績について調査がなされた。これらの結果より,強力で確実な抗菌性と安全性を併せもつK-20は,その臨床応用に際して不快な副作用を伴うこともなく,予後の調査でも従来の報告に比較して,優るとも劣らない成績を示した。これより,抗菌性を備えたK-20の使用は,根管充填の成功に寄与するものであると考えられる。
  • III. ワックスの物理的性質と冷却条件の影響
    片倉 直至, 荒木 吉馬, 川上 道夫, 笠原 紳
    1984 年3 巻2 号 p. 312-319,335
    発行日: 1984/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ワックスパタンの外側性部分に発生する熱応力とその緩和は,パタンの寸法精度を論ずる際に,きわめて重要な因子である。著者らはこれまでに粘弾性応力の理論解析を行ない,冷却過程におけるワックスの熱応力を,ほぼ定量的に算出できることを明らかにした。今回は物性値の異なる3種類のワックスを用いて,冷却条件を変えた時の熱応力を数値解析によって求め,パタンの収縮について検討した。
    その結果によれば,ワックスの応力緩和が大きい程,また軟化したワックスと外界との温度差が小さい程,パタンに発生する熱応力は小さくなった。解析された残留応力値から求めたパタンの外側性部分の収縮値は,内側性部分の自由収縮値よりもきわめて小さいことが分かった。この事実は,ワックスの応力緩和が,パタンの外側性部分の収縮抑制に大きく寄与していることを示すものである。
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