抄録
著者らは,既に前報にて象牙質窩洞に対しては完全な適合性を有するコンポジットレジンシステムを開発し,報告してきた。本実験においては,このシステムをエナメル質象牙質双方に窩縁を有する窩洞に応用するため,これら2種類の窩壁に同時に有効な窩洞清掃法の検討を行なった。窩洞清掃としては,EDTAまたは10-3溶液(3%塩化第2鉄を含有する10%クエン酸水溶液)による一括処理法,さらに,コントロールとして,38%リン酸ゲルとEDTAによるエナメル質,象牙質塗りわけ法を用いた。なお,窩洞清掃法以外は,象牙質窩洞で完全な適合性の得られたシステム,つまり,プライマーとして35%HEMA水溶液を用い,4-METAを含有する試作ボンディング剤を塗布し,UDMAをベースとする試作コンポジットレジンを填塞硬化させる方法を用いた。なお,これら窩洞清掃法がレジンの接着性に与える影響は,エナメル,象牙質双方に窩縁を有する円柱窩洞内での,maximum contraction gapの測定および平坦な歯面に対するtensile bond strengthの測定により評価した。その結果,10-3溶液で5秒間処理した場合に最良の接着性が得られ,窩洞全体を同時に処理しうる清掃法の可能性が示唆された。