2018 年 2018 巻 9 号 p. 215-232
本稿の目的は、「アジア学生調査2013」を用い、日中の大学生を対象として、相手国に対する好意度の規定要因を探ることにある。分析の結果、日本人の中国に対する好意度で負の相関が見られたのはエスノセントリズム、文化ナショナリズム、経済ナショナリズムであった。他方、中国人は愛国心と世界市民意識を持つほど、日本に対して非好意的である。さらに、中国の大衆文化に接触する日本人、及びソーシャルメディアの利用頻度が高い中国人は、対相手国の好意度が高い傾向が見られる。累積ロジスティック回帰分析では、中国人と中国の大衆文化への接触が、日本人の中国に対する好意度を高めるのに対し、エスノセントリズムは中国に対して非好意的に作用することが示された。また日本語能力が高く、日本人や日本の大衆文化に接触し、世界市民意識を持つことが中国人の日本に対する好意度を促進するのに対し、愛国主義は日本に対する好意度を悪化させることが明らかになった。最後に、両国国民の関係がいかに改善し得るかを検討した。