抄録
黄繭系のカイコ「金黄」は, 桑葉で飼育されるとき, 幼虫最終令において体液中カロチノイドをその絹糸腺に吸収し, 黄色の繭をつくる因子型をもつ品種であるが, カロチノイドを含まない半合成飼料で幼虫最終令が飼育されるときは, 白い繭しかつくらなかった.
一方, カロチノイドとして, β-カロチンのみが加えられた半合成飼料で, 幼虫最終令が飼育された場合, その繭の色および絹糸腺の各部域における着色順序は, いくつかの欧州系肉色繭品種のそれらと完全に一致していた.これらの結果は, 遺伝的に制御されている絹糸腺および繭における着色の発現が, 幼虫最終令期の食物条件によって限定されていることを示唆している.
さらに, 絹糸腺におけるカロチノイド吸収の開始は, 幼虫が桑葉で, 異なる温度条件のもとで飼育されたときにおいても, 絹糸腺の成長と密接に関連していた.すなわち, 絹糸腺の一定の成長度のところで着色がみられた.しかし, 異なる半合成飼料でそれぞれ飼育された場合, たとえ温度条件が一定であったとしても, 絹糸腺の成長はまちまちであって, しかも, 絹糸腺における着色の開始は, その絹糸腺の成長度とは無関係であるという異なる結果がえられた.