生物環境調節
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水耕トマトの生育段階および栽植方式による栽培ベッド内の溶存酸素濃度と培養液の流れの変化
景山 詳弘益田 忠雄
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1979 年 17 巻 1 号 p. 11-16

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抄録
湛液定時循環式の水耕装置によってトマトを栽培し, 培養液中へ溶存酸素を供給するために液の循環を行い, 循環時の栽培ベッド内での培養液の流れの状態と液中の酸素濃度を, トマトの生育段階を追って調査した.
栽培ベッドは4.0m×0.8mで湛液の深さを7cmとした (培養液量は244l) .培養液の循環は別に設けた貯液槽 (65l) から小型ポンプを用いて行い, 空気混入器を通した液を栽培ベッドの一方の角から流入させ, 対角線上の他の角からオーバーフローさせて貯液槽に戻し繰り返し循環させた.循環は1時間ごとに10分間行い, 循環流量は1分間に約15lとした.
トマトは育苗床で育苗したものを, 本葉4枚時にベッドへ2条直列株間20cmで定植した.
1) トマトの植付前およびトマトの第1花房開花時では, 培養液の循環時の溶存酸素濃度は, ベッド内の給液側, 中央部および排液側の各位置においてほぼ同一の傾向で変化した.供給した培養液はベッド内全体へよく混合された.
2) トマトの第5花房開花時においては, 直列植えの場合は供給した液の流れが根によって妨害され, ベッド壁に沿った根の密度の低い部分を通って液の一部がただちに排液される現象が起り, ベッド内への溶存酸素の供給が不均一になった.このため, ベッド内の排液側のトマトの生育は給液側よりわるくなった.
3) トマトの植付方法を千鳥植えにした場合は, ベッド内の根の密度が均一になり, 供給された液は給液側から排液側へ順次混合されていった.その結果, 溶存酸素濃度の不均一は直列植えより少なくなり, ベッド内の位置によるトマトの生育の差は少なくなった.
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© 日本生物環境工学会
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