生物環境調節
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低温および日長に作用される白菜花茎伸長の数式モデル
森 啓一郎江口 弘美松井 健
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1979 年 17 巻 1 号 p. 17-26

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抄録
植物の生育および分化に関与する環境要因の作用を量的に評価する数式モデルを確立するために, 白菜の花茎伸長 (抽苔) に複合的に作用する低温および日長をパラメータとしたモデリングを試みた.植物材料としては, 春播白菜「長岡交配耐病六十日」を用い播種後15日目 (2葉期) の幼苗を実験に供した.実験Iでは異なる処理温度, 処理時間を設定し, さらに処理後の日長を操作した.実験IIでは低温処理を行わず, 日長処理のみを行った.その結果, 実験IIでは花茎伸長は観察されなかったが, 低温処理を行った実験Iの長日条件において花茎の伸長が認められた.この花茎伸長は低温処理時間と日長によって花茎の最終値に明瞭な差異が認められ, また立ち上りの遅れにも差異がみられた.各処理条件における花茎長は低温処理終了からの経過日数を独立変数としたlogistic curveに適合した.その漸近値は低温処理時間と処理後の日長の関数として与えられた.さらにこのlogistic curve式を1次遅れ式に近似させ立ち上りの遅れを時定数とむだ時間の和として評価した.前報で遅れの評価パラメータとしてlog10ΔT1/2td2 (ΔT=20℃-処理温度, tdは低温処理時間) が用いられうることが明らかになったが, 日長をパラメータとして組み入れる場合, log10PΔT1/2td2 (Pは日長の関数) の関数で遅れを評価しうることがわかった.したがって花茎伸長の立ち上りの遅れは処理温度, 処理時間, 日長の関数として与えられた.
このようにして与えられた漸近値と遅れ時間を満足する1次遅れ式を用いた花茎伸長の数式モデルから花茎伸長促進には, 低温処理時間が最も大きく作用し, 次に日長, 処理温度の順に作用の効果が小となることがわかった.また本実験において決定された低温処理条件の評価はキュウリ雌花分化に作用する低温条件のそれとよく対応した.
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© 日本生物環境工学会
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