カイコ2化性品種宝鐘の卵期を25℃全明 (24L) 条件で保護し, 孵化後幼虫期間を400, 460, 500, 540, 590, 670, 700および710nmの波長をもつ単色光下, 長日 (20L4D, 24L) 条件において, 桑葉粉末50%を含む人工飼料で飼育を行った.その結果, 540nm以下の単色光下で飼育した場合, 非休眠卵を産む蛾が多くあらわれた.この場合, 24Lよりは20L4Dの光条件の方が非休眠卵を産む蛾が多くなる傾向があり, しかも幼虫期の経過の早いものほど, その傾向は強かった.
また, カイコを桑葉で飼育し, 各波長光下, 長日条件で飼育した場合には, すべての実験区で非休眠卵を産む蛾はえられなかった.
以上の結果から, 人工飼料を用いて飼育したカイコは, 幼虫期にも540nm以下の光に感じて休眠性に変化を生ずることが明らかになった.休眠性決定に関する従来の研究結果から, 長日条件は脳一食道下神経節系からの休眠ホルモンの分泌を抑えていることが推定される.