生物環境調節
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サラソウジュの種子の寿命と二次休眠に及ぼす冷温処理の効果
サハ P.K.高橋 成人
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1986 年 24 巻 1 号 p. 27-32

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抄録
サラソウジュ (Shorea robusta Gaertn. f.) は, インドの北部一帯から中部に原産する樹木として林業上重要なものであるが, その種子は, 木材を目的とする植林のためだけではなく, 種子そのものが食用油の原料として貴重なものである.ところがこの種子は, 収穫後きわめて急速に寿命を消失してしまうため, 従来からインドではその対策を立てることが要請されてきた.本研究はこのような背景の下で計画されたものであり, 種子の寿命消失の過程を発芽と発芽時の吸水パターンおよび種子貯蔵の温度条件について検討を加え, この種子の寿命保持の条件を確立することを目的として行われたものである.サラソウジュの種子は, 収穫直後では高い発芽力をもつが, 室温条件 (25°~30℃) 下では, 急速に発芽力が低下し始め収穫後10日目には発芽不能となる.TTC検定の結果, この種子は寿命を消失したことが確認された.しかし, 収穫直後に10°~20℃の冷温に貯蔵すると, 少なくとも2カ月は発芽力を保つことが判明した.その後さらに冷蔵を続けると, 発芽の低下が始まりついには発芽不能となる.ところが, この発芽不能の種子は水分吸水パターンやTTC検定の結果, 寿命を消失したのではなく, 二次的に休眠が誘導されたことが確められた.またこの休眠誘導は種子の包被組織の透過性が, 冷温貯蔵によって変化した結果であるものと推定された.本研究結果によって, サラソウジュの種子の急速な寿命消失は, 冷温貯蔵によって回避させることができたが, この手法をさらに改良応用することによって, この有用な樹木の植林を拡大する上に大いに役立てることができよう.
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© 日本生物環境工学会
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