本研究はトマト (Lycopersicon esculentum Mill.) 一段養液栽培において頻発する裂果について, その機構を水分状態計測から考察することを目的とした.培養液の濃度を-0.06MPa一定に設定した区 (対照区) および開花後24日目以降-0.36MPaに変更した区 (ストレス区) において, 果実部位別の水分状態を等圧式サイクロメータで計測した.ストレス処理後10日目までの果皮硬度は両処理区に大きな変化はなかったが, 裂果頻度はストレス区において大きく減少した.対照区における果肉部と培養液の水ポテンシャル勾配は, ストレス区におけるそれよりも大きくなった.また果肉部の膨圧は対照区において日の出後に増加したのに対し, ストレス区においては大きな変化はみられなかった.このことから日の出後の水ポテンシャル勾配の増加, そして果肉の膨圧の上昇が, 裂果を引き起こす主要因と考えられた.