抄録
蔓なしインゲン (品種‘トルカット’) を用い, 根域温度と培養液のN, K濃度が, 生育, 落花, 落莢, 収量, 無機成分含量に及ぼす影響を明らかにした.本品種では, 栄養器官ならびに生殖器官の発育に対し, 根域温度のほうが培養液のN, K濃度より, 顕著な影響を与えた.根域温度が20℃, 25℃, 30℃では植物の生育を促進したが, 35℃では蔓の伸長が弱くなり, 葉色は緑が濃くなり, 葉面積は減少した.また, 光合成速度に関しては, 培養液のN, K濃度に関わらず, 根域温度が30℃までは温度が高くなるに従って増加した.莢数は20℃, 25℃, 30℃で増加した.無機成分含有率をみると, 全窒素, Ca, Mgは葉身中で高く, Pは莢中で高く, Kは両器官に差はなかった.本実験の結果から, 根域温度を20~30℃の範囲に保つと, 培養液のN, K濃度に関わらず, 生育が促進されることが示唆された.また, 35℃の根域温度は根の生長に悪影響を及ぼし, 根の組織の死につながる.