生物環境調節
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タバコ栽培における地温・土壌水分に対するフィルムマルチの影響について
久米 英夫吉田 恵美子
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1969 年 6 巻 2 号 p. 81-86

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抄録

被覆材料にポリエチレンフィルムを使用し, 全面をマルチした高畦, 慣行マルチの畦, および無被覆の畦にタバコを栽培し, 地温, 土壌水分, タバコの生育を比較した.地表面および地中の最高温度と平均温度は無被覆区<慣行マルチ区<全面マルチ区の順に高く, 土壌下層への温度伝導もこの順に大となった.温度伝導率はいずれの区でも土壌水分, 日射量が多いほど大きかった.水蒸気の大気中への発散を極度に抑制した全面マルチ区では温度伝導率がとくに大きく, マルチ下では熱の移動が気相によって行なわれていることを知った.
日射量583.9calの晴天日における, 全面マルチ区での地中への熱移動量を潜熱・気相による顕熱・伝導熱に分けて計算するとその比は約2.5: 1.2: 1となった.
タバコの生育期を通じて土壌の平均水分は無被覆区がもっとも高く, つづいて慣行マルチ区, 全面マルチ区の順であった.土壌水分の変動は全面マルチ区がもっとも少なく, 4~15%の範囲にあった.降雨後の水分増加は無被覆区がもっとも速く, マルチ区, 全面マルチ区の順に遅延した.
タバコの収量は無被覆区がやや多い程度で, 区間での大きな差はなかった.肉眼鑑定によるタバコの品質評価額は全面マルチ区が無被覆区より約10%程度高く, マルチ区はその中間であった.

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