応用生態工学
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事例研究
河川流域住民における環境認識イメージ分析
高島 太郎中島 敦司山田 宏之
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2011 年 13 巻 2 号 p. 141-148

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抄録
近年, 地域環境施策に住民の意見を取り入れる機運が高まっている。住民の自然環境に対する認識は地域特性や個人属性により多様であると想定されるが, 現在の参加型地域環境施策の中では自然環境認識として一括して扱われる傾向がある。地域住民の自然環境認識を地域特性や個人属性とも関連付けながら把握し, 傾向分類していくことは, より実行力のある地域環境施策を展開する上で不可欠である。こうした観点から, 本研究では, 豊富な自然環境資源を有しながらも, 過疎化の問題を抱えた典型的な中山間地である, 和歌山県古座川町を対象とし, 地域住民の環境意識を傾向分類することを目的とした。調査は, 住民24名を対象に, 自然環境の認識について, 1対1対面インタビュー形式で行った。分析方法は, まずインタビューで抽出された環境変化の認識に対する項目のグループ化を行った。さらには, 住民の認識タイプを分析するため因子分析を用いた環境変化要因の抽出を行った。結果, インタビュー項目は, 「森林管理変化」, 「河川の変化」, 「農地の放棄」など, 9項目に分類を行った。住民は, 暮らしの中において居住地区によって, 自然環境の変化を受け止め, 経年変化などの事実をもとにして地域の自然環境を比較し, 現状を把握している傾向がみられた。また, 因子分析結果から, 住民は自然環境に対して「農林業因子」, 「生活因子」, 「土木因子」, 「高齢化因子」の4因子を通じて認識していることが明らかとなった。また, それぞれの因子は, 相互を関連させる認識は起こりにくく, 単一になる傾向がみられた。したがって, 住民が仕事や暮らしの中で関わりのあることがらの中で, とりわけて接点のある事柄に対する認識をもとに, ひとつの環境認識が形成されるものと判断された。昨今の環境施策においては, 地域住民の意見を反映させる必要性が高まっている。住民意見の背景には, 各々の環境認識に影響されることから, より実行力のある環境施策を展開するためにも, 住民参加型の運用プロセスにおいては, あらかじめ住民の環境認識に対する傾向を活かした適切な意見収容の仕組みの検討が重要である。
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© 2011 応用生態工学会
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