抄録
河口閉塞が感潮域魚類相に及ぼす影響を把握することを目的に, 沖縄島北部の11河川感潮域で, 魚類の出現状況と河川環境 (水位, 流速, 水温, 塩分, 開口幅) について, 四季の調査を行った. 「閉塞なし」, 「部分閉塞」, 「完全閉塞」の河川間で比較すると, 「完全閉塞」の河川で, 魚類の出現種数が少ない傾向がみられ, 特に海域及び感潮域への依存性の強い魚類の種数が少なかった. 原因として, 河川水の低塩分化と魚類の侵入阻害が考えられた. 「完全閉塞」の河川のうち, 潮汐に応じて塩分が変動した座津武川のみで, 海域依存性の強い魚類が確認された. このことから, 「完全閉塞」の河川であっても, 潮汐による影響を受ける場合は, 海域依存性の強い魚類が河川内で生存することが可能であると考えられた. また, ヨシノボリ属は, 春季に完全閉塞していた2河川で, 遡上個体が確認されなかった. このことから河口閉塞がヨシノボリ属の新規加入を阻害することが示唆された. 魚類の出現種数は, 四季を通じて, 朔望平均満潮位における河川開口幅および水位変動幅と正の相関にあった. 河川開口幅および水位変動幅は閉塞状況に関係しており, 河口閉塞による魚類の出現状況への影響を示す指標となると考えられた.