応用生態工学
Online ISSN : 1882-5974
Print ISSN : 1344-3755
ISSN-L : 1344-3755
事例研究
山地渓流に設置された農業用取水堰の特徴
- 魚類の移動阻害に関する比較 -
大浜 秀規青柳 敏裕芦澤 晃彦
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 15 巻 1 号 p. 101-107

詳細
抄録
農業用取水施設の設置状況と魚類の遡上可否に関し調査を行い,魚類にとって好ましい取水方法について検討を行った.農業用取水施設として山梨県の波木井川 - 箇所,常葉川 12 箇所,芦川 11 箇所,亀沢川 6 箇所,塩川 10 箇所の計 48 箇所を調査した.堰堤のある取水でも,堰の上流に斜め堰を設置している場合が 65 % あった.取水施設別の遡上可能率は,堰堤がない場合 93 %,堰堤に魚道がある場合 25 %,堰堤に魚道がない場合 8 %であった.また,施設の構造物別の遡上可能率は斜め堰が 97 %,魚道が 25 %,堰堤が 7 % であった.堰堤の遡上制限要因は落差の 83 % が一番高かった.堰堤への魚道設置率は 24 % であったが,魚道機能の低下が,全ての魚道で認められた.9 種 439 尾の魚類が施設周辺で採捕され,農業用取水施設周辺で魚類の生息していることが確認された.堰堤だけで安定的に取水するのは難しく,斜め堰が多くの取水に設置されていた.斜め堰と堤外水路による取水は,流路の維持等管理の手間はかかると思われるが,取水位置が適切ならば,安定的に取水でき魚類の遡上を妨げず環境を改変しない取水方法と考えられた.
著者関連情報
© 2012 応用生態工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top