応用生態工学
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15 巻, 1 号
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原著論文
  • -自然海岸との比較・検討 -
    乾 隆帝, 西田 高志, 鬼倉 徳雄
    2012 年15 巻1 号 p. 1-17
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,福岡県日本海側の漁港の船揚場スロープ(以下,漁港スロープ)と,周辺水域の様々なタイプの自然海岸の魚類群集構造を比較することにより,漁港スロープにおける魚類の出現特性を明らかにすることを試みた.漁港スロープでは,70種,合計8875個体の魚類が採集された.漁港スロープ未成魚群集は,静穏で内湾的な地点と類似し,種数,個体数ともに豊富であった.一方成魚の群集構造は,砂浜海岸の一部と漁港によって構成されるグループと類似し,種数,個体数ともに豊富な,静穏な内湾や汽水域の中で,特に緩い潮間帯傾斜を持つ地点とは類似していなかった.これらのことから,漁港スロープは,未成魚の生息場として,一部の内湾的な自然海岸と同等の機能を持つ可能性がある一方,成魚生息場としては不十分な環境であるということが示唆された.
  • - ヒヌマイトトンボ幼虫の生息域とその保全に関する解析 -
    大石 哲也, 天野 邦彦
    2012 年15 巻1 号 p. 19-29
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/08
    ジャーナル フリー
    従来,環境情報の取得と記録は,定性的情報が多用されていた.その一方で近年,電子技術が急速に進歩し,小型で大容量・高処理能力を備えた計測機器やパーソナル・コンピュータが普及してきた.これにより,環境情報の取得方法についてもデジタル化が進み,より定量的な環境情報の取得が可能となりつつある.本論文では,位置情報の精度が異なる地形や生物などのデータを用いて,河川域の生物生息環境を把握する方法について検討を行った.具体的には,利根川河口域 (10.0~15.5 kp)を対象に,GIS により過去から現在に至るデータを一元化し,水環境がヒヌマイトトンボ (Mortonagrion hirosei Asahina) 幼虫や植物群落に与える影響の解明を行った.結果として,幼虫が生息する環境は,年間の累積浸水時間が 1~500 (時/年),浸水確率にして約 1~9 %,標高がT. P. 0.2~0.6 m の範囲に多く分布していることがわかった.浸水継続条件では,1~3 (時/年) 継続する場所までは,幼虫の確認地点数の多いものの,7 (時/年) 以上となる場所では,その数が激減することがわかった.さらに,幼虫とヨシ群落との関係についても,幼虫の生態的適域は,ヨシ群落のそれに一致しないことがわかった.このことは,ヒヌマイトトンボ幼虫の生息場所を確保するには,その場所のみを残せばよいというわけでないことを示唆している.つまり,幼虫の生息場所の維持には,ヨシ地下茎の伸展が期待できる成長旺盛な陸域のヨシ群落をひとまとまりの環境として残すことが重要となる.本論文で示したように,過去に取得されたデータを活用する際には,解析対象が規定するスケールでの必要な精度を満たせれば,GIS による定量的解析に十分用いることができる.このような視点で見れば,過去の生物調査データは,適切に利用することで,計画段階で河川改修が河川生態系へ及ぼす影響を適切に予測し,配慮できるうえに,改修後のモニタリングにも活かせるものと考えられる.
  • 大谷 壮介, 上月 康則, 倉田 健悟, 山中 亮一
    2012 年15 巻1 号 p. 31-44
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,徳島県吉野川河口干潟において,物理環境の変化に対する生物群集の応答を示すことができる簡便で,実用性の高い底質環境・生物群集対応モデルを提案した.まず,粒度組成と地盤高さといった予測可能な限られた物理的指標を用いて,底質環境と底生生物群集の対応モデルを作成した.底質環境・生物群集対応モデルは年を重ねるごとに新たなデータを追加して作成し,5ヵ年の底質環境,底生生物データから底質環境・生物群集対応関係の精度を高めていった.底質環境による調査地点のグループ分けは,まずシルト・クレイ率のデータに地盤高さを加えることで論理的かつ簡便にグループをまとめられ,各グループは底質環境に対応した異なった底生生物群集であることがわかった.シルト・クレイ率と地盤高さという予測可能な2つの物理的な底質環境項目からモデルを用いて再現性の検証を行った結果,実際の調査結果との一致率は最大7割であった.再現性に及ぼすモデル作成時に用いるデータ量の影響について,本河口干潟では底質環境・生物群集モデルは少なくとも2年分のデータがあれば5年分のデータで得られた予測精度と大きくは変わらなかった.また,予測と実際の調査結果が一致しなかった地点については過去の底質環境の変動パターンから底生生物群集の変化を考察した結果,底生生物群集が変化途中であると示唆され,底質環境の変化に伴う底生生物群集の応答時間スケールの解明が課題点として明らかになった.
  • 木塚 俊和, 山田 浩之, 平野 高司
    2012 年15 巻1 号 p. 45-59
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/08
    ジャーナル フリー
    近年,農業活動に伴う泥炭地湖沼の水質汚濁が顕在化しており,水文化学環境の改善が泥炭地湖沼の生態系保全にとって重要な課題となっている.本研究では,このような劣化した泥炭地湖沼の修復に向けた基礎的な知見を得るために,周囲を農地で囲まれ,富栄養化が著しい北海道石狩泥炭地の宮島沼 (湖水面積 : 0.26 km2, 平均水深 : 0.59 m) を対象に,水収支および全窒素,全リン,Ca2+ を含む物質収支を,2007・2008 年の湖水の非結氷期 ( 4 -11 月) に調べた.その結果,水路による流入・流出水がそれぞれ全流入水量の 88%,全流出水量の 78%を示し,水収支の大半を占めた.水収支と同様に,物質収支でも,水路による流入出が収支の大部分を占めており,その量は灌漑期 ( 5 - 8 月) に顕著に多くなった.流入物質の由来を検討した結果,水路から湖沼に流入する物質は,主に水田灌漑のために供給される石狩川の河川水に由来するものと考えられた.このように,宮島沼では栄養塩類やミネラルイオンを豊富に含んだ河川水が流入するため,全窒素,全リン,Ca2+ の流入負荷量が,自然条件の泥炭地湖沼に比べて著しく多かった.灌漑による河川水の供給は,泥炭地湖沼が本来有する水・物質収支の特徴を大きく改変させるとともに,物質の流入負荷量を増加させ,富栄養化をはじめとする水質汚濁をもたらしていると考えられた.
  • 小林 哲
    2012 年15 巻1 号 p. 61-70
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/08
    ジャーナル フリー
    モクズガニ Eriocheir japonica の微生息環境利用様式を,5 月の日中に福岡県の流程数 km の 2 河川で調査した.西郷川下流域の 2 カ所で約 50 m の流路に沿ってコドラート法による定量採集により,河床単位に応じた分布様式を明らかにした (調査 1 ).中川の下流域で 3 列× 25 個の区画 (横断方向と流れの方向にそれぞれ 1 m 幅で設定)において,コドラート法による定量採集を行い,環境要因を測定した (調査 2 ). また 10 月に西郷川下流域で転石の被度面積に対する分布個体の甲幅 ( mm )と転石あたりの分布密度の関係を調査した (調査 3 ).調査 1 と調査 2 でほぼ同様なモクズガニの分布傾向が認められた.モクズガニは河床単位内で集中分布を示し,瀬の環境 (調査 2 では水深 5-15 cm,流速 40-70 cm/sec,底質の粒径 4-50 mm [砂利] -250-500 mm [巨石])に高密度で分布し (約 1 -20 個体/ 0.25 m2),淵 (約 0-5 個体 / 0.25 m2 ; 水深 20-40 cm, 0-20 cm/秒,< 0.025 mm [泥] —0.125- 1 mm [砂]) に比べて瀬を好む傾向が明らかとなった.さらにカニは高い転石被度を好んでいた.しかし実際には,カニの高い密度 (調査 2 では 10-25 個体/0.25m2) は瀬と淵の境界周辺域に認められた.これはモクズガニの流れに対する正の走性と高い移動能力が原因と考えられる.このことから,淵と瀬が繰り返された自然度の高い河川環境が微生息環境として重要であると推察された.転石の被度面積と分布個体の甲幅には有意な相関は認められなかったが,被度面積と分布個体の密度には有意な正の相関が認められた.これは大きな石の間隙がカニのサイズに関係なく多数の個体に利用されることを示しており,モクズガニが河川では特定の隠れ家を占有せず,日和見的に石の間隙を利用していることを反映していると考えられる.堰などの河川横断工作物はモクズガニの分布の集中をもたらすと考えられるが,淵において転石被度を高めることで分布の集中を緩和することも可能であると考えられた.
事例研究
  • 白川 北斗, 柳井 清治, 後藤 晃
    2012 年15 巻1 号 p. 71-79
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/08
    ジャーナル フリー
    絶滅が危ぶまれているカワヤツメの産卵場選択に重要な環境要因を明らかにするため,北海道石狩川の支流であるオシラリカ川において,2005年,2006年,2009年の三カ年調査を行った.調査は全ての年度で 6 月に行い,産卵床(在/不在)と物理環境(流速,水深,河床材料)を測定し,同時に高精度 GPS を用いて産卵床の空間位置を記録した.産卵床と環境要因の関係を調べるため,解析には一般化加法モデル (GAM)を用いた.調査の結果,産卵床の空間分布は年度ごとに異なっていたが,その分布は一様ではなく集中分布する傾向を示した.またカワヤツメの産卵場選択に影響する要因として,3 カ年通して水深 35-50 cm 前後が統計的に有意に重要であったが,流速は年度ごとに異なることが示された.これらのことから,カワヤツメが水深 35-50 cm 前後に産卵するのは,河川の水位低下による卵の斃死を防ぐためと考えられた.
  • 岸 大弼, 原 徹, 苅谷 哲治, 徳原 哲也
    2012 年15 巻1 号 p. 81-89
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,水路における魚類の生息状況の改善を目的とし,木製構造物を設置して,物理環境の変化および魚類に対する効果を検証した.調査の結果,木製構造物の設置による水深の増大作用および流速の減勢作用が確認された.一方,砂礫の供給量が少ないために木製構造物の設置後も,砂礫の堆積作用は不明瞭だった.今後,砂礫を投入した木製構造物についても実地試験を行い,砂礫の保持力や水生動植物への効果を検証する必要がある.魚類の量的変化は検出されなかったが,種数については設置後に操作区が対照区を上回っており,木製構造物を設置した区間が選好されることが示唆された.本研究で提示した木製構造物の設置は,短期間で安価かつ平易な技術で実施することが可能である.また,原状復帰あるいは移設が容易であるため用水管理や農作業の状況変化に対応しやすく,相応の実用性を有していると考えられる.
  • 今村 史子, 城野 裕介, 徳江 義宏
    2012 年15 巻1 号 p. 91-99
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/08
    ジャーナル フリー
    生態系の上位種であるコゲラについて,都市近郊域を対象として広域スケールの環境要因と各樹林地の植生構造等の詳細なスケールの環境要因に基づいて,生息環境の評価を行った.愛知県の逢妻男川の周辺の規模の異なる 41 地点の樹林地を対象に,コゲラの生息状況を把握する調査を行い,また各樹林地内の代表的な箇所にコドラートを設定して群落高,階層別の植被率,枯死木等を把握する生息環境の調査を行った.さらに空中写真をもとにして,周辺の樹林地の分布状況や経過年数について把握した.各樹林地においてコゲラの生息状況を調査した結果,コゲラはほぼ 1 年中生息が出現したこと,また 14 地点において生息が確認され,特に社寺林等の成熟した樹林地で生息が確認される傾向にあった.コゲラの生息を説明する環境要因を検討するため,各樹林地を単位に,コゲラの生息の有無を目的変数,植生構造や周辺の樹林地率を説明変数に設定してロジスティック回帰分析を行った.AIC とモデルの予測正解率を基準として,変数の取捨選択を行ったところ,コゲラは樹林地面積,樹高 8 m 以上の階層の植被率,周辺 300 m の樹林地率が高い樹林地を選好すること,また群落の最上層の竹林の植被率が高くなると生息に負の影響を与えているとする式が得られた.モデル式による予測からは,コゲラの現状の生息の有無が 97.6 % 説明されており,精度の高い式が得られた.結論として,コゲラは樹林性の鳥類であることから面積が大きくかつ樹高が高い樹林地が重要となること,また竹林は餌資源,営巣,飛翔等の観点から生息に不適である可能性が示唆されたということ,周辺 300 m という日常的に飛翔が可能な空間において樹林地率が高くなることが重要であることを指摘した.
  • - 魚類の移動阻害に関する比較 -
    大浜 秀規, 青柳 敏裕, 芦澤 晃彦
    2012 年15 巻1 号 p. 101-107
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/08
    ジャーナル フリー
    農業用取水施設の設置状況と魚類の遡上可否に関し調査を行い,魚類にとって好ましい取水方法について検討を行った.農業用取水施設として山梨県の波木井川 - 箇所,常葉川 12 箇所,芦川 11 箇所,亀沢川 6 箇所,塩川 10 箇所の計 48 箇所を調査した.堰堤のある取水でも,堰の上流に斜め堰を設置している場合が 65 % あった.取水施設別の遡上可能率は,堰堤がない場合 93 %,堰堤に魚道がある場合 25 %,堰堤に魚道がない場合 8 %であった.また,施設の構造物別の遡上可能率は斜め堰が 97 %,魚道が 25 %,堰堤が 7 % であった.堰堤の遡上制限要因は落差の 83 % が一番高かった.堰堤への魚道設置率は 24 % であったが,魚道機能の低下が,全ての魚道で認められた.9 種 439 尾の魚類が施設周辺で採捕され,農業用取水施設周辺で魚類の生息していることが確認された.堰堤だけで安定的に取水するのは難しく,斜め堰が多くの取水に設置されていた.斜め堰と堤外水路による取水は,流路の維持等管理の手間はかかると思われるが,取水位置が適切ならば,安定的に取水でき魚類の遡上を妨げず環境を改変しない取水方法と考えられた.
短報
  • 竹内 康憲, 須貝 俊彦, 加賀谷 隆
    2012 年15 巻1 号 p. 109-114
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/08
    ジャーナル フリー
    山地渓流に生息する魚類の生息場所評価を行う上で,淵のサイズ評価は重要である.本研究では,画像撮影と簡便な測量に基づく新たな方法(画像撮影法)による淵の相対水表面積と相対容積の評価を試み,従来の横断測量(トランセクト法)による評価と比較することで,勾配が急な山地渓流におけるこの方法の有効性について検討した.平均河床勾配が 20%のステップ・プール河道において,24 個の淵(長軸 1~7 m)を対象として評価を行った.それぞれの淵について,箱尺に取り付けたデジタル・カメラで 5 m 上部から撮影し,画像解析により淵の相対水表面積を評価するとともに,これと簡易測量によって得た最大水深評価値の積を淵の相対容積として評価した.また,4 本のトランセクトを設定し,淵の平面形状を多角形近似して水表面積を評価するとともに,トランセクト上における計 20 地点の水深測定値から淵の立体形状を多面体近似して容積を評価した.画像撮影法とトランセクト法による水表面積評価値の間,画像解析法による相対容積評価値とトランセクト法による容積評価値の間には,ともに高い比例関係が認められた.画像撮影法における現地での作業労力は,トランセクト法のそれと比べて 1/3 ~ 1/4 以下であった.また,画像撮影によるカバー面積評価も有効であることが示された.これらのことから,勾配が急な山地渓流において,魚類の生息場所として淵のサイズを評価する上で,画像撮影法は有効な方法であるといえる.
  • 山室 真澄, 八巻 礼訓
    2012 年15 巻1 号 p. 115-120
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/08
    ジャーナル フリー
    小型魚類にとって沈水植物群落は,捕食者からのシェルターとして,また採食の場として重要とされている.しかし富栄養化に伴い多くの湖沼で,沈水植物群落は衰退もしくは消滅している.このような状況で沈水植物群落が果たしていた役割を抽水植物群落が代替できるか検討することを目的として,手賀沼のマコモ群落とヒメガマ群落の魚類相を比較した.また捕獲した魚類の炭素・窒素安定同位体比を分析して,食性の比較を行った.マコモ群落の株密度は,6 月と 8 月の両観測時共に,ヒメガマ群落の 2 倍以上であった.魚類の種多様性はマコモ群落の方がヒメガマ群落より高かった.安定同位体比の結果から,両群落の魚類の食性は近似していると推定された.小型魚類の密度は,マコモ群落の方がヒメガマ群落より大きかった.ただし両群落とも,優占した小型魚類はモツゴであった.マコモ群落とヒメガマ群落において魚類生息状況に差異が認められたことから,抽水植物の植栽においては,その魚類相に与える影響も考慮すべきと考えられた.
  • 高橋 真司, 渡辺 幸三, 竹門 康弘, 大村 達夫
    2012 年15 巻1 号 p. 121-130
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,河川のハビタットを流水性ハビタット 4 種と止水性ハビタット 3 種の計 7 種に分類し,高精度 GPS を活用して定量調査をするとともに底生動物の定性調査を行った.これら調査を貯水ダムの上下流域で実施し,1) ハビタット構造に及ぼすダム影響評価への高精度 GPS の適用性を検討し,2) 河川リーチ内のハビタット構造と底生動物の種多様性の関係を評価した.2007 年 12 月に宮城県中南部地域の 9 河川区間において,底生動物調査を行い,2008 年 7 月から 10 月に高精度 GPS を用いたハビタット構造調査を行った.樽水ダムおよび釜房ダム直下区間のハビタット多様性及び止水性ハビタット面積比は上流区間より低かった.しかし,大倉ダム直下区間は,ハビタット多様性が上流区間より高かった.これは,河川の蛇行度が他の地点と比較して高かったことと,河岸周辺の地質が軟らかく土砂供給が容易だったことの条件が揃った事で生じた推察される. 底生動物の分類群数は,止水性ハビタットの面積比と正の相関があり,河川内の止水性ハビタットの割合が増加するほど底生動物の分類群数が増加する傾向が見られた.止水性ハビタットは,河床に細粒分の土砂や有機物が堆積しやすい環境にあり,このような環境を好適に選択する種の生息機会が増えたため,区間内により多くの種が出現しやすくなったと考えられる.生物の種多様性と止水性ハビタット量の関係は,リーチ内の生物多様性の保全対策において,止水性ハビタットを環境評価の指標として加える必要性を示している.ダム下流域で河川環境改善を目的とした様々な施策が行われ,その成果の評価に止水性ハビタットを指標として活用すれば,ダム下流域の生物多様性の回復を図れる可能性がある.
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