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応用生態工学
Vol. 19 (2016) No. 2 p. 143-164

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http://doi.org/10.3825/ece.19.143

総説

現在日本の河川は,ダムや連続堤防等の様々な人為的改変の影響を受け,流程に沿った水域のつながりである「縦断的な連結性」と,河川- 氾濫原間の水域のつながりである「横断的な連結性」の両タイプの連結性を著しく失っている.本論では,国内の河川における連結性および生物多様性の向上を目的とし,分断化要因や再生手法について国内外の既存文献のレビューを行い,個々の再生手法の特徴や実施上の留意点,我が国における水域ネットワーク再生の現状と課題について整理した.縦断的連結性の再生手法として,物理的な分断化を対象とした 3 タイプ,水温や水質悪化による移動阻害を対象とした 1 タイプが認められた.また,横断的な連結性の再生については,河道内および河道外氾濫原を対象とした再生手法として計 7 タイプが確認された.これら多様な再生手法には,効果が特定の種に限定される傾向にあるもの,不適切な方法・箇所での実施によりさらなる連結性や河川環境のさらなる劣化につながる危険性を有するものも認められ,国内でのさらなる普及のためには,順応的管理等を通じて個別の技術的な課題を解決する必要があることも明らかとなった. 人間活動の淡水環境や周辺の土地への依存度の変化に伴い,実施可能な再生手法も変化する.特に,河川構造物や土地利用の増加により,本来の自然プロセスの復元が難しい現状では,代替的な連結性に着目した「創出」や「部分的プロセス再生」といった再生タイプが主流の対策となる.一方,人口減少や横断構造物の老朽化といった変化が予想される今後は,河川横断構造物の撤去など自然プロセス自体を復元する「全体的プロセス再生」の推進が期待できる.再生箇所の優先順位付けは事業効果の向上の鍵であり,特に,設置数も多く連結性低下に深刻な影響を及ぼしている砂防堰堤等の小型河川横断構造物のデータベース化が喫緊の課題と言える.

Copyright © 2017 応用生態工学会

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