応用生態工学
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事例研究
河川工作物による環境改変が淡水魚類群集に及ぼす影響
用田 悠介鹿野 雄一阿部 信一郎井口 恵一朗棗田 孝晴
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2018 年 21 巻 1 号 p. 17-28

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抄録

本研究は茨城県北の 4 河川(里根川,塩田川,東連津川,宮田川)を対象として,2014 年 8 月に各河川の流程最下流部に設置された堰の上下区間で電気ショッカーによる魚類調査と物理環境(水深,流速)の調査を行った.捕獲された 16 魚種のうち,7 種が通し回遊魚,7 種が純淡水魚,2 種が周縁性淡水魚であった.4 河川の堰上区間の全魚種及び通し回遊魚の多様度(Hʼ)は,堰下区間よりも有意に低かった.AIC の値に基づく GLM のベストモデルは,堰の存在が全魚種及び通し回遊魚の多様度に有意な負の効果を及ぼすことを示した.通し回遊魚の種の生息個体数を説明する GLM のベストモデルの変数(標準化偏回帰係数の傾き)として,アユでは水深(+),流速(-),堰の落差(-)の 3 変数と調査面積(offset 項)が,スミウキゴリでは堰の存在(+),水深(+),堰の落差(-)の 3 変数が,シマヨシノボリでは堰の存在(-),水深(+),流速(+)の 3 変数が,カジカ小卵型では堰の存在(-),流速(-),堰の落差(+)の 3 変数と調査面積(offset 項)がそれぞれ採用さ れた.水深と流速の 2 つの物理環境要因の平均値を基に算出された調査地間のユークリッド距離と魚種構成の非類似度指数(Bcd)との間には,全魚種及び通し回遊魚ともに有意な正の相関が認められ,Pearson の相関係数の正の傾きは,通し回遊魚でより顕著であった.これらの結果は,堰上区間における通し回遊魚の多様度や生息個体数の減少が,堰の落差による魚類の上流への移動阻害だけでなく,堰の存在を介して生じる堰上区間での魚類の生息環境上の改変にも起因することを示唆する.

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© 2018 応用生態工学会
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