応用生態工学
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21 巻, 1 号
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原著論文
  • 赤松 良久, 後藤 益滋, 乾 隆帝, 山中 裕樹, 小室 隆, 河野 誉仁
    2018 年21 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 2018/07/28
    公開日: 2018/09/10
    ジャーナル フリー

    ヌートリアは,西日本の本州・四国に定着した特定外来生物に指定されている哺乳類であり,生態系保全・河川管理の両面から,効率的に侵入を防止し,防除方法を確立することが望まれている.そのためには,簡易かつ有効的な侵入モニタリング方法の確立,さらには,好適な生息環境を明らかにする必要がある.そこで,本研究では,環境 DNA 分析を用いることにより,山口県広域における分布状況を明らかにし,さらに,GIS を用いてヌートリアの生息適地を明らかにするとともに,分布予測モデルを用いた潜在的生息地の推定をおこなった.その結果,山口県においては,既に県内の広域にヌートリアの分布が拡大していること,そして,流域特性に関係なく,県内の河川の中下流域で侵入・定着のリスクあることが示された.

  • 田中 雄一, 河村 年広, 佐伯 晶子, 加藤 久
    2018 年21 巻1 号 p. 9-16
    発行日: 2018/07/28
    公開日: 2018/09/10
    ジャーナル フリー
    本研究では,コンクリート製の農業水路に転落したカエル類の脱出対策を検討する上で重要な,脱出能力の種間差と脱出対策が必要な水路の摩耗程度を明らかにした.コンクリート製水路の摩耗程度の定量的指標である算術平均粗さ(Ra, mm)が 0.23,0.28,0.55 および 1.23 の 4 水準のコンクリート壁(供用年数 0 ~約 40 年)に対する脱出行動を室内実験により調査した.ヌマガエルとトノサマガエルは全てのコンクリート壁で 7.5%以上の個体が脱出したのに対して,ツチガエルは Ra が 0.23 では脱出がみられなかった.さらに,ナゴヤダルマガエルの脱出は Ra が 1.23 のコンクリート壁でのみでみられ,脱出率は 12.5%と低かった.したがって,これら 4 種の生息地域での水路からの脱出対策は,脱出能力が最も劣るナゴヤダルマガエルに着目すべきと考えられた.本種に着目する場合の脱出対策は,少なくとも Ra が 0.55 までは必要で,1.23 でも講じることが望ましいと推察された.なお,どの種も実験装置の四隅を登はんして脱出したため,本研究で示した Ra による基準は,コンクリート面が直交する形状を有する桝や鉄筋コンクリート組立柵きょ・直壁型(例:組立水路Ⅰ型)にのみ当てはまる.コンクリート面が直交しない形状の水路では,脱出が著しく困難になると推測されるため,水路の摩耗程度に関わらず脱出対策が必要なことが示唆された.
事例研究
  • 用田 悠介, 鹿野 雄一, 阿部 信一郎, 井口 恵一朗, 棗田 孝晴
    2018 年21 巻1 号 p. 17-28
    発行日: 2018/07/28
    公開日: 2018/09/10
    ジャーナル フリー

    本研究は茨城県北の 4 河川(里根川,塩田川,東連津川,宮田川)を対象として,2014 年 8 月に各河川の流程最下流部に設置された堰の上下区間で電気ショッカーによる魚類調査と物理環境(水深,流速)の調査を行った.捕獲された 16 魚種のうち,7 種が通し回遊魚,7 種が純淡水魚,2 種が周縁性淡水魚であった.4 河川の堰上区間の全魚種及び通し回遊魚の多様度(Hʼ)は,堰下区間よりも有意に低かった.AIC の値に基づく GLM のベストモデルは,堰の存在が全魚種及び通し回遊魚の多様度に有意な負の効果を及ぼすことを示した.通し回遊魚の種の生息個体数を説明する GLM のベストモデルの変数(標準化偏回帰係数の傾き)として,アユでは水深(+),流速(-),堰の落差(-)の 3 変数と調査面積(offset 項)が,スミウキゴリでは堰の存在(+),水深(+),堰の落差(-)の 3 変数が,シマヨシノボリでは堰の存在(-),水深(+),流速(+)の 3 変数が,カジカ小卵型では堰の存在(-),流速(-),堰の落差(+)の 3 変数と調査面積(offset 項)がそれぞれ採用さ れた.水深と流速の 2 つの物理環境要因の平均値を基に算出された調査地間のユークリッド距離と魚種構成の非類似度指数(Bcd)との間には,全魚種及び通し回遊魚ともに有意な正の相関が認められ,Pearson の相関係数の正の傾きは,通し回遊魚でより顕著であった.これらの結果は,堰上区間における通し回遊魚の多様度や生息個体数の減少が,堰の落差による魚類の上流への移動阻害だけでなく,堰の存在を介して生じる堰上区間での魚類の生息環境上の改変にも起因することを示唆する.

  • 井上 太樹, 野嵜 弘道, 舘井 恵, 井上 博文
    2018 年21 巻1 号 p. 29-36
    発行日: 2018/07/28
    公開日: 2018/09/10
    ジャーナル フリー

    四国地方整備局山鳥ダム工事事務所による山鳥坂ダム建設事業では,流水性トンボ類アオサナエを対象とした保全措置を検討しており,その整備内容の具体化が課題となっている.本事例では,現地調査結果に基づく生息適地解析により,事業者の実施可能な範囲を考慮しつつ,生息環境整備の候補箇所および必要な整備内容・規模の検討を行った.現地調査として,肱川水系の河辺川,肱川,舟戸川,黒瀬川,大谷川の流程合計約 36 km において,アオサナエ幼虫の生息状況および生息環境(河床材料,河川環境)を調査した.現地調査結果に基づき,Maxent による生息適地解析を実施した.さらに,解析結果や事業者の実施可能性を考慮し,生息環境整備候補地および整備シナリオを検討した.整備シナリオについては複数案を検討し,各整備シナリオに対して構築した生息適地モデルを適用することで,各整備シナリオの有効性を検証した.調査の結果,アオサナエ幼虫が計 80 地点で確認され,ダムの洪水時最高水位付近でも生息が可能であることが示唆された.また,生息適地解析の結果,「中砂~小礫」,「シルト~中砂」,「平瀬」,「ワンド・たまり」といった環境要因が高いモデル寄与率を示したことから,緩流部の堆砂環境が生息適地であることが示唆された.この解析結果を踏まえ,事業者の直轄区間のうち,生息不適地であるが生息適性度が比較的高い 1 区間を整備候補地として選定し,整備シナリオを検討した.検討の結果,整備候補地の現状の環境条件について,大礫から中砂へ 50 m2,早瀬から平瀬へ 50 m2 それぞれ変化するように整備することで生息適地となり,さらに事業者の実施可能性的にも有効であることが示された.本事例の検討プロセスは,環境影響評価法に基づく環境保全措置として生息環境整備を実施していく上で,効果的な整備内容を事業者が確実に実施していくための手法の一つとして有効であると考えられる.

  • 藤本 泰文
    2018 年21 巻1 号 p. 37-43
    発行日: 2018/07/28
    公開日: 2018/09/10
    ジャーナル フリー

    富栄養化した湖沼ではハス Nelumbo nucifera の過剰繁茂による水質汚濁や生物多様性の劣化が問題となっている。このため,刈払い等によるハスの管理活動がいくつかの湖沼で行われてきた。ハスの効果的な管理手法の開発のため,刈払いがハスの生残に及ぼす影響を伊豆沼に隣接する試験池で評価した。試験池に生育していた 2 ~ 36 枚の葉を持つ 22 株のハスについて,葉の葉柄を水面下 40 cm の位置で刈払ったところ,8 株(36.4%)が枯死した。枯死した株の刈払い前の平均葉数(4.5 ± 0.8 枚,最小~最大:2 ~9 枚)は,生残した株の葉数(11.9 ± 2.8 枚,最小~最大:3 ~36 枚)の半数以下であった。 この時,3 日以内に水面に新しい葉を出葉させた株は生残し,出葉できなかった株はそのまま枯死していた。そこで,葉数 1 ~38 枚の葉を持つ 11 株のハスについて,水面への出葉を阻害するよう,短い間隔で刈払ったところ,刈払い前の葉数に関わらず全ての株が 3 日以内に枯死した。この結果は,出葉の可否が刈払い後の生死を決定する重要な条件であることを意味する。したがって,葉数の少ない時期を中心に,繰り返し刈払う管理方式は,出葉の阻害に着目した有効な手法になると考えられる。

短報
  • 田子 泰彦, 飯田 直樹, 東 秀一, 新田 朗
    2018 年21 巻1 号 p. 45-52
    発行日: 2018/07/28
    公開日: 2018/09/10
    ジャーナル フリー

    神通川の神三ダム下流の淵(長さ約 70 m,幅約 150 m,最大水深 13.7 m)で,サクラマス親魚が出水時に遊泳していた個所の水深を,アーカイバルタグの装着によって 2009 年に調べた.出水前には表層(水面から約 1 m)にいたサクラマスは,流量の増加とともに,浮上と潜行を繰り返しながら,より底層へと移動した.最大出水時には流速の早い表層と深部を避け,両岸近くの水面から 2 ~ 4 m の水深帯に生じた緩流域に滞留したと推測された.水位が低下しはじめると,サクラマスは再び浮上と潜行を繰り返しながら,より表層へと移動し,平水になると出水前とほぼ同じ位置へと戻った. これらのことから,深くて多様な空間を有する淵が,出水時におけるサクラマスの避難場所として機能する可能性が示唆された.

  • 宮脇 成生, 永山 滋也, 加藤 康充, 伊藤 英恵, 萱場 祐一
    2018 年21 巻1 号 p. 53-60
    発行日: 2018/07/28
    公開日: 2018/09/10
    ジャーナル フリー

    これまで,治水上の必要性から,河川の高水時の水位については水理学的検討が多くなされている.一方,冠水頻度といった河道内氾濫原環境の特性を理解する上で重要となる,河川の平常時の水位の縦断形を推定する手法については十分検討されていない.本研究では,水位観測所における既存水位データを活用した平常時水位の簡易な推定手法を開発し,庄内川の実測データを用いて推定精度の検証を行うことを目的とした. 開発した推定手法では,まず定期横断測量データから河床高に相当する「基準高」を生成する.そして,水位縦断形を基準高と水位観測所の水位データを使って生成する. 庄内川のセグメント M,1,2-1,2-2 を対象に,開発した推定手法に加え,線形補間,等流解析による平常時水位の推定を行い,実測された水位データに照らして推定精度を比較した.その結果,開発した手法は線形補間よりもすべてのセグメント区間で高い精度を示した.また,開発した手法は,定期横断測量データを入力条件とする等流解析と比べて,セグメント 2-1,2-2 において高い推定精度を示し,セグメント 1 および M では同程度の精度であった。

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