応用生態工学
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レポート
千葉県船橋市におけるチョウゲンボウの代替巣の利用について
立林 泰典河村 真悟末廣 富士代石井 重久
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2019 年 21 巻 2 号 p. 203-208

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抄録

千葉県船橋市が所有するごみ焼却施設の解体及び,隣接地への新設事業における環境影響評価の結果を受けて,旧施設に営巣する小型猛禽類チョウゲンボウへの配慮事項として新施設へ代替巣を設置した.設置した代替巣の大きさは,高さ 32 cm × 幅 42 cm × 奥行 50 cm,設置位置は地上 38 m の建築物の壁面とした.また,代替巣の周辺に見張り,餌の解体ができるとまり場所を設置した.代替巣設置 1 ヶ月後に利用が確認され,翌年の繁殖期には幼鳥の巣立ちが確認された.この見張り場や餌の解体場を含めて検討した代替巣を筆者らは船橋式代替巣と呼ぶこととした. チョウゲンボウの営巣条件のうち見晴らしのよい場所としての条件は,巣の下方 10 m,巣の前面 60 m 程度の範囲に障害物がないことが挙げられた.見張り場は巣と水平もしくは巣よりやや高い位置が利用されており,巣の周辺 60 m 程度の範囲に巣と同程度又は巣よりやや高い位置に見張り場所があることがチョウゲンボウにとって好ましいものと考えられた.餌の解体場については 80 cm × 7 cm の場所でも餌を解体しており,幅の狭いスペースでも解体場として機能するものと考えられた.本報告では,これまで環境影響評価における保全対策として実施された報告がないチョウゲンボウの代替巣の成功例として,船橋式代替巣の特徴である見張り場・餌の解体場を含めた代替巣の形状やサイズ等の詳細を報告した.また,営巣条件の一つとされる見晴らしの良さについて具体的な数値情報を報告した.

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© 2019 応用生態工学会
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