2019 年 22 巻 1 号 p. 51-60
日本では沈水植物が繁茂すると透明度が高くなり,アオコの発生が抑制されると考えられている.しかし沈水植物が繁茂することで透明度が高くなるとの説を提唱した研究者自身が,2007 年にその説を修正している.現在では,透明度を高くするには沈水植物ではなく,シャジクモ類が繁茂する必要があると考えられている.シャジクモ類は湖底を覆うように繁茂し,一部の沈水植物のように水面まで覆って鉛直混合を妨げ,湖底を貧酸素化することはない.また含有するカルシウムにリンが沈着することも,透明度を高める原因と考えられる.沈水植物が過剰に繁茂するようになった琵琶湖南湖と宍道湖では,ともにアオコが発生しやすくなった.沈水植物の光合成によって水中に溶存する二酸化炭素が減少し,光合成において炭酸水素イオンを利用できるラン藻類に有利になるためと考えられる.除草剤使用により平野部湖沼で沈水植物が衰退するまでは,日本では肥料利用のために沈水植物が根こそぎに近い強度で刈り取られていた.このような強度の刈り取りが,沈水植物の過剰繁茂を防ぎ,貧酸素化などを防いでいたと考えられる.欧米では沈水植物とは別に大型底生緑藻の過剰繁茂の弊害が大きく,特に五大湖ではボツリヌス菌が増殖するほど嫌気的な環境が形成され,水鳥の大量死が起こっている.大型底生緑藻の過剰繁茂の原因はリンの過剰供給とされており,日本でも沈水植物の異常繁茂による嫌気化が続けば,堆積物から溶出するリンにより大型底生緑藻の過剰繁茂が発生するかもしれず,注意が必要である.