応用生態工学
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原著論文
産卵床の礫間から表流水への浮上が遅滞するアユ仔魚
高橋 勇夫藤田 真二東 健作岸野 底
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2020 年 23 巻 1 号 p. 47-57

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抄録
河川を流下するアユ仔魚の卵黄の保有量はその後の生残に大きな影響を及ぼす.本研究では産卵床から表流水 に浮上した直後のアユ仔魚の卵黄の吸収状態を明らかにするために,2018 年 11 月~12 月に奈半利川,物部川の自然および人工産卵場ならびに四万十川の自然産卵場でふ化したアユ仔魚を採集し,卵黄指数を観察し比較した.また,奈半利川と物部川の産卵場では産卵床の砂礫中の仔魚を採集し,卵黄指数を観察した.さらに,奈半利川では産卵床を構成する砂礫の粒度分析も行った.物部川の人工産卵場の直下で採集されたアユ仔魚のほとんどは採集される直前に人工産卵場内の礫間から浮上したものであると判断されたにもかかわらず,卵黄をかなり吸収した状態である指数 2 の個体の割合が 45~74%と高かった.この事実は,ふ化した後,産卵床の砂礫中から表流水に浮上するまでに数日を要する個体が多いことを意 味しており,実際,人工産卵場内の砂礫中から卵黄の吸収が進んだ指数 1 ~ 2(ふ化後数日経過)の仔魚が採集された.一方,奈半利川の人工産卵場(ふるいに掛けて細粒分を除いた砂利を敷設)の直下では,採集された仔 魚のほとんどが人工産卵場由来の場合には,卵黄が大量に残存している指数 3 および 4 で 75%を占め,指数 2 が優占した自然産卵場由来の仔魚の卵黄指数の組成とは差異が認められた.また,自然の浮き石底が形成されていた四万十川の自然産卵場由来の仔魚の卵黄指数は 4 と3 で全体の 75%近くに達していた.細粒分を除去した奈半利川の人工産卵場でふ化から浮上までの時間が短く, 2 mm 以下の砂の割合が高かった自然産卵場では浮上までに長い時間を要する個体が多かったことから,産卵場 の河床材料中に 2 mm 以下の砂が多い場合に,礫の間隙が塞がれ,仔魚の浮上が遅滞しやすくなることが示唆された.
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© 2020 応用生態工学会
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