2021 年 23 巻 2 号 p. 331-340
本報告は東日本大震災の復興道路建設に伴う自主的な環境影響評価により,対象事業実施区域内にオオタカの営巣が確認され,人工巣による営巣地の誘導が保全措置として実施されたため,人工巣の検討・実施の経緯を詳しく紹介し,今後のオオタカの保全措置の参考となることを目指したものである.当初の人工巣は,対象事業実施区域から可能な限り遠方に設置して誘導を試みたが,設置から 2 年後の工事中に新たな自然巣がもとの自然巣から 260 m の巣間距離で発見された.その実態を踏まえて方針を見直し,直近に利用された自然巣から 260 m 以内に新たな人工巣を設置した結果,3 年目にオオタカの営巣と繁殖成功が確認できたほか,工事完了後には自然巣に戻っての繁殖成功を確認した.以上より,人工巣は工事中の繁殖中断等のリスク低減に一定程度寄与したと考えられた.本事例から得られた結果により,人工巣の利用率を高めるには,自然巣や工事中箇所からの距離,傾斜度などの架巣木の条件を考慮することが望ましいと考えられた.