応用生態工学
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事例研究
三春ダム湖畔におけるイタチハギ群落の成長抑制及びヤナギ群落への変換試験
浅見 和弘大林 直影山 奈美子白戸 孝
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2021 年 23 巻 2 号 p. 319-329

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抄録

三春ダムでは平常時最高貯水位~洪水貯留準備水位までの水位差 8 m の範囲で,イタチハギが目立ってきた.本研究では,イタチハギ伐採後の目標植生を三春ダム湖畔に自生しているタチヤナギやシロヤナギの群落とし,ヤナギ類 2 種がイタチハギより優勢になるまでの伐採条件を求めることとした.ヤナギ類 2 種は 6 月と 12 月に挿し木で植栽したが,植栽後に冠水する 12 月よりも,植栽後約半年間冠水しなかった 6 月植栽の方が活着率は高かった.三春ダムでは定期的に冠水するため,ヤナギ類の植栽適期は限定され 6 月が望ましい結果となった.イタチハギを複数回伐採したが,13 ヶ月に 3 回の伐採では少なく,今回の場合は生長期の伐採 1 回 / 年× 2 ヶ年でも不十分であった.一方,2 ヶ年で合計 5 回の伐採(生長期 2 ~ 3 回/ 年)では効果が見られ,伐採後 3 ヶ年までは,挿し木したヤナギ類 2 種の方が伐採したイタチハギよりも樹高成長速度が大きく,有効であった.本研究の対象地であるダム湖畔の法面は年間 100 日以上冠水することが,先行事例と異なる.しかし,イタチハギの抑制に必要な伐採回数は既存事例(久保 2012;大貫ほか 2013)の冠水しない法面と変わらなかった.つまり,冠水はイタチハギ伐採後の再生長 を抑制せず,4 年目には植栽したヤナギ類の樹高と有意差が少なくなり,再度イタチハギを伐採することが望ましい結果となった.

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