応用生態工学
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平地河川の底生動物に対する河床攪乱の評価:Pfankuch 法の適用性の検討
上田 航福﨑 健太三宅 洋
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2021 年 23 巻 2 号 p. 341-347

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抄録

河床に生息する生物に対する攪乱強度を評価するための簡易かつ適用性の高い手法として Pfankuch 法がある.しかし,この手法は自然度の高い山地河川への適用を想定しており,人為的改変の進行した河川や平地河川への適用可能性は明らかになっていない.本研究は,愛媛県道後平野を流れる複数河川にて Pfankuch 法を用いた河床攪乱の評価を実施し,河床攪乱が平地河川の底生動物群集に及ぼす影響を解明することを目的とした.これにより Pfankuch 法の平地河川への適用性を評価するとともに,平地河川での利用可能性の向上に資する情報を得ることを目的とした.2018 年 9 月に愛媛県道後平野を流れる 10 河川にて調査地を実施した.底生動物の採集を行うとともに,Pfankuch 法(底質要素)による河床安定性の評価を行った.これにより得られた Pfankuch index(PI)に加え,平地河川において典型的に見られる水質悪化の影響を考慮した修正 PI を算出した.底生動物の生息密度および分類群数を応答変数,PI および修正 PI を説明変数とした一般化線形モデルによる解析を行った.PI および修正 PI には調査地間で著しいばらつきが見られた.解析の結果,底生動物の生息密度は PI の値が大きくなるほど低下することが明らかになった.修正後の PI に関しても底生動物の生息密度との間に負の関係がみられたが,関係性の向上の程度は小さかった.本研究により,Pfankuch 法は人為的な改変の進行した平地河川においても底生動物に対する攪乱強度の評価手法として適用可能であることが示唆された.しかし,スコア修正による適用性の改善効果は大きくなかったため,今後は修正方法の改善も含めたさらなる試行が求められる.

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