応用生態工学
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An evaluation of waterfowl sampling methods for the national census on river and dam lake environments
Yoshihisa MORISeiichi KAWANISHINavjot S. SODHISatoshi YAMAGISHI
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2000 年 3 巻 1 号 p. 93-102

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抄録
ダム湖に生息する鳥類の調査は,建設省による「河川・水辺の国勢調査」によって1991年度から実施されている。この国勢調査の目的はダム湖に生息する鳥類の種数と個体数をできるだけ正確に把握することにあるが,そのためには対象となる種の個体数変動を時間的にも空間的にも把握しておく必要がある。本論文では高山ダム(34°45'N,136°00'E,標高168m)を例にとり,このダム湖での冬季の水鳥群集について,短期間(1月中の連続した数日)と長期間(12-3月)の個体数変動と利用場所の変動を,水上からの小型ボートを用いた観察で明らかにし,陸上からのラインセンサスを主とする国勢調査の方法の改善点を検討した。
水上観察の結果から以下のことがわかった。(1)水鳥の個体数は12月が最大(525羽)で以後は減少し,3月に最少(134羽)になるが,1月(331羽)と2月(343羽)の個体数はほぼ同じで,その種構成も変わらなかった。
(2)短期的なスケールでみた水鳥群集の構成は,一日の午前と午後では変わることはないが,連続5日間では変化した。しかしこの変化は大きいものではなかった。また,種によって個体数変動の程度が違っており,ヒドリガモやカワウでは大きく,オシドリでは小さかった。(3)水鳥が利用する場所は長期的にも短期的にもほぼ安定しており,その場所は種によって異なっていた。(4)陸上からのラインセンサスは,オシドリとコガモのカウントには適していなかった。
これらのことから,水禽類における精度の高い個体数推定を行なうためには国勢調査の方法を以下の点で改善することが望ましいと考えられた。(1)冬季については調査時期を1-2月に設定する。(2)種毎の個体数変動と行動圏配置を考慮し,調査範囲をダム湖の上・下流に広げる。(3)陸上から湖面の水鳥をカウントする際には,調査の定線と定点を慎重に設定する。(4)ボートによる調査をつねに併用する。
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© Ecology and Civil Engineering Society
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