抄録
本研究は,北海道空知支庁管内の尻岸馬内川に設置されている堰(床固工:落差2m,落下部はコンクリート水叩)から魚類が落下した際の影響を把握し,改良施工後の影響回避効果を検証することを目的とした.堰改良前に実施した落下実験および生存分析の結果,在来種であるハナカジカおよびフクドジョウには落下の影響は認められなかったものの(生存率100%),ニジマスの0+稚魚には落下の影響が認められた(生存率73%).落下の影響を回避するために,水叩部に副堤を設けることによる改良施工を実施した結果,水叩部の水深は大きく,流速は小さくなり,落下流の減勢効果が認められた.このような条件の下,ニジマス0+稚魚について落下実験および生存分析を実施した結果,落下実験群の生存率は95%となり,対照実験群の生存率85%との間には有意な差異が認められなかった.一方,落下実験群を改良前後で比較すると,生存率は改良前73%から改良後95%に増加が認められた.以上のことより堰の改良施工には一定の効果があったものと考えられるが,落下衝撃の度合いは河川の流況変動により異なってくることが推測されるため,保全の対象とする魚類の降下生態を踏まえ,降下時期の流況を見据えた上で落下影響を把握することが必要である.