応用生態工学
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河川人工構造物が通し回遊性無脊椎動物の生息に与える影響について
河川間比較による検討
井手口 佳子山平 寿智
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2004 年 6 巻 2 号 p. 145-156

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抄録
福岡県内の75本の河川を対象に,流量および人工構造物(堰,水門,護岸など)の設置状況と,通し回遊性の甲殻類および貝類の生息状況(バイオマス・密度)の関係について調べ,通し回遊性無脊椎動物の着底と遡上,および生息に影響する要因について検討した.各河川の淡水域下限でそれぞれ定量採集・観察を行った結果,ミゾレヌマエビとイシマキガイは流量の大きな河川ほどバイオマスが高かったが,トゲナシヌマエビは流量の小さな河川に多く出現することがわかり,同じ通し回遊性生物でも着底・遡上の生態に種間差があることが示唆された.また,ミゾレヌマエビとイシマキガイは堰が無いより有る河川の方が,トゲナシヌマエビは水門が有るより無い河川の方が,それぞれバイオマスが高かった.これらは,堰や水門の有無と各河川の流量とが多重相関しているために現れる見かけの効果によると考えられた.河床の状態,護岸の有無,そして水際の植生量が各種のバイオマス・生息密度に与える影響は,種間で大きく異なっていた.ミゾレヌマエビは天然の河床で植生の豊富な河川に多く出現したが,トゲナシヌマエビ,モクズガニ,およびイシマキガイは人工的な河床や護岸が施された河川にも多く出現した.この種間差は,淡水域での生態の違いを反映していると考えられた.また,堰の上流の停滞域には,非通し回遊種(純淡水種)のミナミヌマエビが多く出現した.河川人工構造物が通し回遊性無脊椎動物に与える影響を評価するには,構造物による直接的影響(回遊経路の遮断など)以外に,生物的環境(種間競争や捕食圧)の変化による間接的影響にも焦点をあてる必要もあると考えられた.
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