抄録
湿地植生の遷移は自然再生事業において維持管理上重要な視点となる.しかし,抽水植物の拡大特性や遷移については不明の点が多いため,抽水植物間の競合の優位性を考慮し立地条件を把握することが重要な課題となっている.本研究は,抽水植物間(ガマ属とヨシ)の浅い湛水深における競合優位性の変化を先取り状態の違いと土壌栄養塩状態に注目して,その傾向を定量的に把握することを試みたものである.研究の結果,ガマ・ヒメガマが同じ状態で競合を開始した場合には浅い湛水深でもヒメガマが有利である.ガマが先取りで入植した場合には土壌栄養塩の状態によってヒメガマが駆逐できるか否かが決まる.土壌栄養塩蓄積の影響が高くなればより密生したガマ群落をヒメガマが駆逐可能となる.日射・気温の厳しい高緯度のほうが低緯度に比べてガマ群落は安定であるが,低緯度より高い富栄養化状態になるとヒメガマ群落に駆逐される.このような栄養繁殖種の競合の優劣は長期的に決定される.メカニズムとしては,地下部バイオマス増加能力と土壌栄養の関係が重要である.ガマ属とヨシの競合解析の結果,コガマ・ガマのヨシに対する先取り効果はあまりなく,ヒメガマはヨシに対して比較的先取り効果のあることがわかった.これらは地下部の増大能力やR/S,従属生長期の地下茎利用率などでその順位についての解釈が可能である.ガマ属とヨシに限らずに多年生の抽水植物・湿生植物が競合する際の重要な指標の1つと考えられ,他の種についても注目する必要がある.