教育社会学研究
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PISA型学力は日本の学校教育にいかなるインパクトを与えたか
山田 哲也
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2016 年 98 巻 p. 5-28

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抄録

 本論文は,PISA型学力が日本の学校に与えた影響について検討するために,バジル・バーンスティンの理論的枠組みに依拠しつつ,PISA実施の前後で生じた学校教育のペダゴジーの変容過程を分析した。
 「生きる力」の育成を教育目標に掲げた1990年代の学校教育のペダゴジーは,子ども中心的で弱い分類・枠づけを特徴とするコンペタンス・モデルに近接するかたちで展開した。ところが90年代末に「学力低下」論が社会問題化し,2000年代以降もPISA などの国際学力調査によって学校教育が抱える課題が示されると,文部科学省は「確かな学力」の定着・向上を強調し,強い分類・枠づけを特徴とするパフォーマンス・モデルへとペダゴジーのあり方を転換した。
 ただし,そこで生じたのは単なる伝統的教授法への回帰ではなく,ヤヌス的な様相を持つペダゴジー,すなわち分類と枠づけの値を強めつつも,グローバルな教育文化が求める「機能的リテラシー」の育成をめざす一般的スキル・モードへの接近であった。このペダゴジーにおける評価ルールは,〈権利保障・平等〉言説,〈競争を通じた卓越〉言説,メリトクラシーの多元化言説という競合・補完関係にある3つの規制言説によって規定されているが,PISA 実施以降に展開した学力重視路線を背景に,近年は〈競争を通じた卓越〉言説の規定力が強まり,現場の多忙化・学習の形骸化などのリスクを生み出している。

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© 2016 日本教育社会学会
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