栄養学雑誌
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実践報告
聴覚障がい幼児の咀嚼習慣と口腔機能発達を支援する食教育の実践
尾﨑 はすみ尾崎 莉沙小池 未菜駒居 南保山口 光枝住田 実永井 成美
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2014 年 72 巻 4 号 p. 200-211

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抄録

【目的】聴覚障がい幼児において発音の獲得は重要な教育課題であり,給食や食育を通して口腔機能の発達を支援することは栄養教諭に求められる専門性と考えられる。そこで,聴覚特別支援学校に在籍する幼児と保護者を対象として,「よく噛んで食べること」を給食や家庭の食事で意識・実践するための食教育を行い,PDCサイクルの各段階における評価により実施効果と課題を検討した。
【方法】2012年5~11月に,K聴覚特別支援学校の在籍児(4・5歳児17名)とその保護者(17名)に食教育を実施した。幼児には,視覚教材「かみかみ人形」を用いた咀嚼指導と給食時の声かけを行った。保護者には,よく噛むことが発音や歯並びに与える利点や家庭での取組み方法を講義等で伝えた。食教育の前後に,聴覚支援教育専門教員であるクラス担任(以下クラス担任と記す)の給食時観察による咀嚼状況調査と保護者への質問紙調査を行った。企画評価は,クラス担任とのミーティングによる指導案の評価,および幼稚園教育要領「ねらい及び内容」との整合性の評価を行った。プロセス評価は,食教育への学習者(保護者)の感想,咀嚼指導へのクラス担任の意見,および夏休み後の中間調査に関して行い,影響評価は,前後比較の結果から実施効果と課題を検討した。
【結果】企画段階の評価は良好であったが,プロセス評価では,保護者やクラス担任の意見からは,幼児への意識づけの難しさ等の課題が,夏休み後の中間調査からは,取組みが後退した家庭があることが明らかとなった。影響評価では,クラス担任の給食時観察で「所見あり」であった9名中6名に改善が見られ,家庭では,「歯ごたえを残すように調理する」との回答が有意に増加し,平日のテレビ等視聴時間が有意に減少した。
【結論】前後比較の結果から,食教育後に給食時の咀嚼状況や家庭での取組みに改善が見られた。一方で,夏休み中の「後戻り」防止が課題となった。今後は,食教育内容の改善と継続的な実践が望まれる。

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© 2014 特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
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