栄養学雑誌
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72 巻, 4 号
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原著
  • 穴迫 唯衣, 赤松 利恵
    2014 年 72 巻 4 号 p. 181-192
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/17
    ジャーナル フリー
    【目的】目測法による残菜調査は,集団給食施設における食事摂取量評価法として汎用されている。その妥当性・信頼性を検討した国内外の論文を系統的に収集し,目測法の妥当性・信頼性や評価方法を整理することを目的とした。
    【方法】目測法を用いた集団給食施設の残菜調査結果を,料理ごとに秤量法と比較し妥当性・信頼性を検討した論文を対象とした。医学中央雑誌及びCiNii(国内論文),PubMed及びCINAHL complete(国外論文)によるデータベース検索とハンドサーチにより論文を収集した。
    【結果】採択された論文は,国内論文0編,国外論文12編だった。集団給食施設区分ごとの論文数は,病院5編,高齢者介護施設3編,学校2編,その他2編だった。対象食種は常食が最も多く,11編の論文で,提供量が同一という前提で評価されていた。残菜量(g)を評価単位として算出された,目測法の妥当性を示す相関係数(r)は0.63~0.96だった。目測法の信頼性は5編で検討されており,栄養士3名を評価者とした調査では,評価者間の残菜量(g)の相関係数(r)は,0.95~0.97だった。評価に用いられたスケールの件数は,3件法が1編,4件法が1編,5件法が3編,6件法が3編,7件法が2編,12件法が1編,その他2編だった。
    【結論】提供量が同一の食事において,目測法は対象者の食事摂取量を正確に推量できる手法であることが示唆された。
短報
  • 東泉 裕子, 市田 尚子, 西出 依子, 石見 佳子
    2014 年 72 巻 4 号 p. 193-199
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/17
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究は健康食品素材のひとつであるレスベラトロールの安全性に関する科学的根拠を提供することを目的とし,閉経後早期モデル動物における肝臓薬物代謝酵素cytochromeP450(Cyp)遺伝子発現に対するレスベラトロールの影響を評価した。
    【方法】8週齢のddYマウスに偽手術(Sham)あるいは卵巣摘出手術(OVX)を施した。卵巣を摘出したマウスをOVX群,レスベラトロール 0.1 mg/日投与群(OVX+Res 0.1),レスベラトロール 0.5 mg/日投与群(OVX+Res 0.5),エストロゲン(E2)0.03 μg/日投与群(OVX+E2)の4群に分けた(各群6匹)。レスベラトロール投与による肝臓薬物代謝酵素Cyp遺伝子発現への影響を評価するため,投与2週間後に解剖し,肝臓のDNAマイクロアレイ解析を行った。
    【結果】2週間のレスベラトロール投与は体重や肝臓重量に顕著な影響を与えなかった。DNAマイクロアレイ解析の結果,OVX+Res 0.5 群の肝臓Cyp2b9,Cyp2d10,Cyp2d13,Cyp2d26,Cyp2e1,Cyp4a10 の遺伝子発現がSham群と比較し有意に低値を示した。また,Cyp3a41 の遺伝子発現はOVXにより有意に増加したが,レスベラトロール 0.5 mg/日投与はOVXによる増加を有意に抑制した。
    【結論】閉経後早期モデルマウスにおいて,2週間のレスベラトロール投与は肝臓薬物代謝酵素Cyp遺伝子発現を抑制する可能性が示唆された。
実践報告
  • 尾﨑 はすみ, 尾崎 莉沙, 小池 未菜, 駒居 南保, 山口 光枝, 住田 実, 永井 成美
    2014 年 72 巻 4 号 p. 200-211
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/17
    ジャーナル フリー
    【目的】聴覚障がい幼児において発音の獲得は重要な教育課題であり,給食や食育を通して口腔機能の発達を支援することは栄養教諭に求められる専門性と考えられる。そこで,聴覚特別支援学校に在籍する幼児と保護者を対象として,「よく噛んで食べること」を給食や家庭の食事で意識・実践するための食教育を行い,PDCサイクルの各段階における評価により実施効果と課題を検討した。
    【方法】2012年5~11月に,K聴覚特別支援学校の在籍児(4・5歳児17名)とその保護者(17名)に食教育を実施した。幼児には,視覚教材「かみかみ人形」を用いた咀嚼指導と給食時の声かけを行った。保護者には,よく噛むことが発音や歯並びに与える利点や家庭での取組み方法を講義等で伝えた。食教育の前後に,聴覚支援教育専門教員であるクラス担任(以下クラス担任と記す)の給食時観察による咀嚼状況調査と保護者への質問紙調査を行った。企画評価は,クラス担任とのミーティングによる指導案の評価,および幼稚園教育要領「ねらい及び内容」との整合性の評価を行った。プロセス評価は,食教育への学習者(保護者)の感想,咀嚼指導へのクラス担任の意見,および夏休み後の中間調査に関して行い,影響評価は,前後比較の結果から実施効果と課題を検討した。
    【結果】企画段階の評価は良好であったが,プロセス評価では,保護者やクラス担任の意見からは,幼児への意識づけの難しさ等の課題が,夏休み後の中間調査からは,取組みが後退した家庭があることが明らかとなった。影響評価では,クラス担任の給食時観察で「所見あり」であった9名中6名に改善が見られ,家庭では,「歯ごたえを残すように調理する」との回答が有意に増加し,平日のテレビ等視聴時間が有意に減少した。
    【結論】前後比較の結果から,食教育後に給食時の咀嚼状況や家庭での取組みに改善が見られた。一方で,夏休み中の「後戻り」防止が課題となった。今後は,食教育内容の改善と継続的な実践が望まれる。
資料
  • 長幡 友実, 中出 美代, 長谷川 順子, 兼平 奈奈, 西堀 すき江
    2014 年 72 巻 4 号 p. 212-219
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/17
    ジャーナル フリー
    【目的】近年,若者の朝食欠食率は高い状況が続いており,それに対する対策が必要であると考えられる。本研究では,大学生の朝食欠食習慣に関連する要因を住まい別に検討し,その対策を考えるための基礎資料を得ることを目的とした。
    【方法】2012年6~10月に,愛知県T大学の3年生と4年生の学生(調査当時学生数:男性995名,女性744名)に開講されている科目の履修者483名を対象に自記式質問紙調査を行った(有効回答数397件)。調査項目は,属性の他,朝食摂取頻度,生活習慣や食習慣についてである。解析対象は,朝食摂取頻度と住まい(自宅生か下宿生か)に無回答であった11件を除外し,386件とした。住まい別に,χ2 検定およびロジスティック回帰分析(強制投入法)を行い,朝食欠食習慣に関わる生活習慣や食習慣について検討した。
    【結果】自宅生では,コンビニ弁当や惣菜の利用頻度が週3日以下の者と比較して週4日以上の者の朝食欠食習慣ありのオッズ比は2.54(95%CI:1.22~5.26)であった。また,下宿生では,アルバイトをしていない者と比較して,している者の朝食欠食習慣ありのオッズ比は4.63(95%CI:1.49~14.41)であった。
    【結論】自宅生では,コンビニ弁当や惣菜の利用頻度,下宿生では,アルバイトの有無が朝食欠食習慣に関係していた。このことから,自宅生と下宿生では,朝食欠食習慣に及ぼす要因が異なると考えられる。
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