栄養学雑誌
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肥満治療のための運動と栄養の処方に関する研究
太田 冨貴雄大島 寿美子平山 昌子鈴木 慎次郎
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1973 年 31 巻 6 号 p. 230-240

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抄録
食事療法だけによる肥満治療法の欠点である基礎代謝の低下, 貧血傾向, lean body mass の減少などをできるだけ防ぎ, 更に減量中に体力の増強をはかる方法として, 運動と減食の併用による肥満治療法の効用を明らかにする実験を行った。即ち, 中年肥満者に1日1600~1700Cal, 蛋白質と脂肪90gの食事と, RMR6のトレッドミル歩行を1日1~2時間行わせて30日間減量をはかり, その間諸種の生理, 生化学的検査を実施して, 減量に運動を用いることの効果を検討した。運動を行った肥満者は, 実験期間中に4.5Kg体重低下がみられたのに対して, 運動量の少ない場合は2.2Kgの体重減にとどまった。運動を併用した場合, 初期の急激な体重低下の他に後期にも同様な効果がみられ, しかも後期の体重減少は皮下脂肪厚, 囲育の減少からみて主として体脂肪の減少によるものと推定された。最大酸素摂取量は減食下にもかかわらず, 実験期間中15~20%に増加し, 減量中の運動も体力増強に効果があることが明らかになった。また, 血中GOT, GPT, CPKなどの酵素活性の状況からみて, 減量中の運動負荷が肝臓や筋肉の傷害を起さないことが明らかになった。17-KS, 17-OHCS, VMAなどの副腎ホルモンの尿中排泄量にも実験期間中に著しい増加は認められず, 本実験条件が被検者に強いストレスを与えることはなかった。以上の点からみると, 肥満治療にRMR 6程度の運動を用いることは適切であると判断されるが, 基礎代謝の低下, 貧血傾向, 窒素の負出納など, 体蛋白の崩壊によると思われる生理機能の低下は本実験でも認められ, 今後更に運動条件, 食事蛋白量, 糖質量などについても検討を加える必要があることを認めた。本実験中, 血中コレステロール, 中性脂肪の減少は著しく, 当初コレステロール値286mg, 中性脂肪446mg/dlの高脂血症老も減量中は正常値を示すようになり, 高脂血の治療に運動と減食がきわめて有効なことが確認された。
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© 特定非営利活動法人日本栄養改善学会
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