1996 年 54 巻 2 号 p. 109-119
EPA及びDHAに富んだ飼料を与えた鶏が産んだEPA及びDHA高含有鶏卵 (高EPA卵) の多価不飽和脂肪酸等の脂溶性成分及び物理化学的性状の安定性を4℃ 及び25℃, 0週間, 3週間及び7週間の保存条件下で観察し, 通常飼料を与えた鶏が産んだ普通卵と比較した。卵重量は高EPA卵及び普通卵とも7週間の保存で同程度に減少したが, その減少は25℃よりも4℃保存のほうが顕著であった。卵黄係数及び濃厚卵白率は25℃, 7週間の保存で顕著に減少したが, 4℃ではほとんど変化しなかった。pHは, 新鮮卵では高EPA卵 (pH8.91) のほうが普通卵 (pH8.34) よりも有意に高かったが, 普通卵のpHは4℃及び25℃のいずれの温度条件下でも3週間の保存によって上昇し, 高EPA卵との顕著な差異はみられなくなった。総脂質, 総コレステロール, 遊離脂肪酸量は高EPA卵及び普通卵とも4℃及び25℃, 7週間の保存ではほとんど変化しなかった。新鮮卵の可食部100g当たりのEPA含量は高EPA卵で86mgであったが, 普通卵は検出限界以下であった。また, 可食部100g当たりのDHA含量は高EPA卵で497mg, 普通卵では77mgであった。n-3系多価不飽和脂肪酸含量は高EPA卵で583mg, 普通卵で77mgとなり, 高EPA卵のほうが普通卵よりも約7.5倍多かった。このEPA及びDHA含量は, 高EPA卵及び普通卵とも4℃及び25℃, 7週間の保存ではほとんど変化しなかった。以上の結果, EPA及びDHA高含有鶏卵のEPA及びDHAは非常に安定な状態で存在し, この鶏卵がn-3系多価不飽和脂肪酸のよい給源になることが明らかになった。