学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
症例報告
胃切除術に関連した非アルコール性ウェルニッケ脳症の1例
曽野 弘士池田 春美平野 憲二貝田 英二前田 滋
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2020 年 2 巻 1 号 p. 40-45

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抄録

【症例】64歳,男性.主訴:眩暈,既往歴:胃がん(14年前),現病歴:耳鳴りと眩暈にて中枢性平衡障害として治療するも改善せず来院した.現症:不安定歩行を認め,意識障害や眼球運動障害はなかった.脳MRIで第3,4脳室周囲に高信号を指摘されウェルニッケ脳症(Wernicke’s encephalopathy;以下,WEと略)と診断された.しかし,血中ビタミンB1(以下,VB1と略)値は正常であった.経過:VB1の点滴により症状は軽減した.内服に移行すると再燃したため点滴を延長したところ再び寛解した.その後も徐々に間隔を空けて継続中であり,症状の再燃なく脳MRI所見も改善した.VB1負荷試験ではビタミン利用障害が疑われた.【考察】本症例はビタミン利用障害による「相対的なVB1不足」が潜在し,胃切除に伴う吸収障害を併発したことで発症したと推察された.典型的な症状や検査結果が揃わなくとも,WEを疑う場合には早期にVB1の静脈内投与を行うことが重要である.

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© 2020 一般社団法人日本臨床栄養代謝学会
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