学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
症例報告
ひきこもりと即席麺の偏食が要因となった栄養障害の1例
中山 由希子山本 純子新野 真純小島 成浩市原 広太郎神田 大輔
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2023 年 5 巻 1 号 p. 37-41

詳細
抄録

ひきこもりとなり,即席麺の極端な偏食によってビタミンB12と葉酸の欠乏による巨赤芽球性貧血を経験したので報告する.症例は31歳男性.16歳から一人暮らしを始め,26歳から家にひきこもるようになった.金銭的な理由もあり食事は約5年間ほとんどカップ麺で済ませていた.歩行困難となり入院となった.BMI 14.1 kg/m2の高度のるい痩と25.5%の高度体重減少を認め,著明な大球性貧血(Hb 2.8 g/dL)を伴う汎血球減少,筋力低下と下肢の位置覚・振動覚低下も認められた.血中ビタミンB12および葉酸の欠乏が確認され,補充したところ症状は回復し退院となった.社会情勢の変化により失業やひきこもりが増加すると,経済的困窮などにより安価で簡便な即席麺に頼り,若年者においても重度の栄養障害が引き起こされる.社会問題を抱える人には栄養障害を未然に防ぐ予防的な視点も重要であり,社会的仕組みの構築が求められる.

著者関連情報
© 2023 一般社団法人日本臨床栄養代謝学会
前の記事 次の記事
feedback
Top