2017 年 61 巻 2 号 p. 49-52
タウは脳で発現する微小管結合タンパク質であり,また,タウオパチーと呼ばれる神経変性疾患群では高リン酸化(40箇所以上)され,凝集体を形成している.タウのリン酸化については非常に多くの報告があるが,リン酸化の実態は明確ではない.というのは大部分がリン酸化抗体を用いた研究で,定量的リン酸化アイソタイプという概念が欠けている.そのため理解に苦しむような結果も多い.本研究内ではPhos-tag法を用いて多数のリン酸化アイソタイプとして存在する培養細胞タウから病態タウについての解析も行った.培養細胞に強制発現させたタウは10以上のアイソタイプとして存在し,前頭側頭葉型認知症(FTDP-17)のR406W変異タウは特定のリン酸化に影響を与えたこと,脳内では非リン酸化のタウがある程度存在することがわかった.Phos-tag法はリン酸化部位の多いタンパク質の解析にも有用であった.