2020 年 64 巻 1 号 p. 35-39
バクテリアにおけるタンパク質のリン酸化を介した情報伝達様式の1つにヒスチジン(His)とアスパラギン酸(Asp)のリン酸化反応がある.これは,環境変化に応答する機構として発達したもので,2成分伝達系とよばれる.外部の環境変化に応じて細胞膜上のヒスチジンキナーゼがHisを自己リン酸化し,即座にそのリン酸基をペアであるレスポンスレギュレーターのAspへと転移させる.このHisからAspへのリン酸基転移反応を通じて的確な環境応答が行われる.この系は様々な環境応答に汎用され,1つの菌体内に複数種存在することが知られる.しかしながら,HisやAspのリン酸基の化学的不安定さのため,これらのリン酸化反応を定量的に解析する方法は限られ,よって,未解明な反応制御機能は多い.本稿では,独自に開発したPhos-tag技術を用いたこの2成分伝達系のリン酸化反応の定量解析法をいくつかの実施例を示しながら紹介する.