抄録
肥満人口は全世界で増加の一途を辿っている.肥満により深刻な合併症が生じることから,その治療は急務である.脂肪細胞は,働きの異なる白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞(BAT)に分別される.前者はエネルギーを蓄える方向に働き,肥満に伴い肥大して,その数も増加する.後者はエネルギー消費と熱産生を担う.BATにはClkファミリーに属するCDC-like kinase 2(CLK2)が存在し,この発現はエネルギー状態の変化に伴い変動することが報告されているものの,CLK2のエネルギーバランスへの役割は明らかでない.
本稿では,BATのCLK2がエネルギー消費の促進に寄与することを示したHattingらの研究成果を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Rodgers J. T. et al., Cell Metab., 11, 23-34(2010).
2) Hatting M. et al., Cell Metab., 25, 428-437(2017).
3) Seimon R. V. et al., Mol. Cell Endocrinol., 418, 153-172(2015).