抄録
抗体医薬,核酸医薬,エピゲノム創薬が加速する中,タンパク質間相互作用(protein-protein interaction:PPI)に影響を及ぼし,シグナル伝達などを制御する薬剤が注目を集めている.PPIはヒト細胞内において約30万以上存在し,生体高分子であるタンパク質同士が表面上にて相互作用することにより,高次構造維持,転写の調節および疾患に至るシグナル伝達に関与している.PPIを安定化させる化合物は,これまでに天然より多く単離されている.その中の1つとしてモモに寄生し,枝枯病を引き起こすカビの一種Fusicoccum amygdaliから生成されるジテルペン配糖体のフシコクシンAが,嚢胞性線維症に関わるPPIを安定化させる天然物として注目されているので紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Bier D. et al., Prog. Biophys. Mol. Biol., 119, 10-19(2015).
2) Stevers L. M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 113, E1152-E1161(2016).