ファルマシア
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自閉症スペクトラム障害の新規治療薬として:分岐鎖アミノ酸の可能性
石渡 小百合
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2017 年 53 巻 8 号 p. 823

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抄録

自閉症スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)は,社会性や言語コミュニケーションの障害,反復行動を特徴とする多表現型の疾患である.これまでの双性児研究や家族間一致率の研究等から,ASDの発症には遺伝的要因が関与していると考えられている.一方,末梢から供給される分岐鎖アミノ酸(BCAA)は脳の活動に重要である.Novarinoらは,ASD,知的障害そして癲癇患者の中に,BCAAの分解を抑制的に制御するbranched chain keto-acid dehydrogenase kinase(BCKDK)遺伝子の変異を持っている患者がいること,彼らの末梢中BCAA濃度は低下していることを明らかにした.
本稿では,BCAAを脳内に輸送するトランスポーターの変異が,ある種のASD病態に関与し,さらにBCAAの投与がそうした病態を改善する可能性があることを示したTarlungeanuらの報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Bailey A. et al., Psychol. Med., 25, 63–77(1995).
2) Zhao Z. et al., Cell, 163, 1064–1078(2015).
3) Novarino G. et al., Science, 338, 394–397(2012).
4) Tarlungeanu D. et al., Cell, 167, 1481–1494(2016).

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© 2017 The Pharmaceutical Society of Japan
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