抄録
4樹種(スギ、ヒノキ、落葉広葉樹2種)の葉の特性を関東地域の筑波試験地(窒素負荷の多い地域)と桂試験地(窒素負荷の少ない地域)で比較した。スギでは生葉窒素濃度に差が認められなかったが、他の3樹種では生葉窒素濃度は筑波試験地で桂試験地よりも高かった。ヒノキと落葉広葉樹では葉面積当たりの重量は、筑波試験地で桂試験地よりも小さかった。葉面積当たりの窒素量の試験地間の傾向は樹種によって異なっていた。落葉前の窒素引き戻し率は、スギでは
つくば試験地で桂試験地よりも低いが、他の3樹種では試験地間で差は認められなかった。4樹種の葉の窒素同位体比は筑波試験地で桂試験地よりも高かったが、葉の炭素安定同位体比は試験地間で差は認められなかった。これらの結果より、窒素負荷が葉の性質に及ぼす影響は樹種によって異なっており、筑波試験地のスギは他の3樹種よりも窒素飽和の進んだ状態にあることが示唆された。