抄録
森林害虫等の捕食者として働く一方、刺傷事故をもたらす要因でもある社会性カリバチ類(スズメバチ類およびアシナガバチ類)について、東北、四国、九州の3地域(各12林分)のスギ人工林でマレーズトラップを用いた採集を行った。これら12林分は管理方法の異なる4カテゴリー(各3林分)に分けられた。1)無間伐の老齢林(78-102年生; OAと略記)、2)無間伐林(41 ー51年生; UT)、3)調査から2-4年前に切り捨て間伐を行った林分(36 ー50年生; TL)、4)同じく伐出間伐を行った林分(TR)。捕獲された社会性カリバチは合計13種(スズメバチ亜科9種、アシナガバチ亜科4種)、350
個体であった。スズメバチ亜科においてはいずれの地域でもキイロスズメバチVespa simillima とシダクロスズメバチVespula shidai が優占的であり、各地域の同亜科総捕獲数のそれぞれ38-55%、32-52% を占めた。管理方法を固定要因、地域をブロックとした一般化線型モデルにより解析したところ、管理方法は種数には影響を与えなかったが、優占種であるキイロスズメバチとシダクロスズメバチの個体数には影響を与えた。すなわちキイロスズメバチではOA、UTおよびTHにおいて個体数がTLよりも大きく、シダクロスズメバチではUTとOAにおいて、TLとTRよりも個体数が大きかった。過去に報告された昆虫類の多くと異なり、なぜ間伐林で個体数が少なかったのかについて可能な原因を議論した。