抄録
主伐の際に重要な森林の構造などを残す施業は保持林業と呼ばれ、木材生産を行なう森林で生物多様性を保全するための有望な方法の一つである。この伐採手法は多くの国で採用され、野外実験により検証が行なわれている。日本では、戦後造成された針葉樹人工林が伐期を迎えつつあり、主伐することにより木材自給へ貢献することが期待されている。一方で、針葉樹人工林の広葉樹天然林への再生や木材生産以外の生態系サービスの維持や向上も人工林が広がる景観では求められている。このような状況で、私たちは北海道のトドマツAbies sachalinensis 人工林で保持林業の大規模操作実験(REFRESH プロジェクト)を立ち上げた。本プロジェクトは6つの処理区(皆伐、3つのレベルの単木保持、0.36 ha の非伐採区を有する群状保持、受光伐)と伐採を行なわない2つの対照区(天然林対照区、人工林対照区)を有しており、各処理区・対照区はそれぞれ3つの繰り返しがある。単木保持では、天然更新由来の広葉樹を3つの異なる量(10 本/ha、50 本/ha、100 本/ha)で保持し、天然林要素の維持と再生を目指している。処理区では伐採後に再度トドマツを植林し、通常の造林作業を行なっている。伐採前と伐採後に、私たちは以下の項目を調べている: 水土保全機能、林業生産性、植物、節足動物、鳥類の多様性。伐採前後の調査により、樹木の保持が伐採地で森林の構造の連続性をいかに提供するのか、そして次の伐期までの長期的な調査により、人工林の構造と組成がどの程度豊かになるのかが示されるだろう。