森林総合研究所研究報告
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茨城県北部小川試験地におけるササ類3種の30年間の動態
新山 馨 柴田 銃江齋藤 智之直江 将司
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2021 年 20 巻 4 号 p. 339-351

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抄録

ササ類は日本の多くの森林で繁茂し、その種の違いは森林植生区分の指標として重要視されてきた。一方で密生したササ群落はしばしば樹木の更新を妨げる。そのためササ類の分布動態の解明は、森林生態学や森林管理上の大きな課題である。本研究はササ類3種が分布する小川保護林において、1) ササ群落の分布動態は、稈高や稈寿命、地下茎の形態などの生態的特性を用いて予測できるのか、2) 雑種起源のアズマザサは親種であるミヤコザサとどのような競合関係にあるのか、3) 極相であるブナ-スズタケ群集に向かってスズタケの優占が進むのか、の3点を検証することを目的に、ササ類3種の稈の分布を30年間 (1990年 - 2020年) 調査した。小川保護林内に設置した小川試験地 (6ha) の10m格子上にある600個の方形区 (2m × 2m) で調査した結果、年拡大速度は、稈高が最も高いスズタケで117m2/year、稈高の低いミヤコザサとアズマザサでは47、53m2/yearであった。稈寿命はスズタケ、ミヤコザサ、アズマザサの順で、15年、2年、7年と推定された。このような3種の分布動態の違いは、稈高や稈寿命などと対応し、アズマザサとミヤコザサは稈高が似ていて共存状態が続くと示唆された。稈高が高く稈寿命も長いスズタケは拡大を続け、ブナ-スズタケ群集へ遷移すると推測された。しかしスズタケ群落の1つが2017年に開花枯死したので、スズタケの実生更新が今後の研究課題となる。

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